どこの国やらこの眺め。でも不思議と調和している?
どこの国やらこの眺め。でも不思議と調和している?
スパは緑に囲まれている
スパは緑に囲まれている

 曲線を多用し、直線を排除する。豊かな色彩でありながら、自然と共生するかのごとく建築物を配置する。東京・三鷹にあるジブリ美術館はこの建築家の作品の影響を受けているといわれている。その建築家とはオーストリアのフンデルトヴァッサー(Hundertwasser 1928-2008)。
 
 母国オーストリアのウイーンはもちろんのこと、ドイツ、ニュージーランドなどにも彼の作品は存在している。そして日本にも。そのひとつは、かつて「税金の無駄使い」として取り上げられたこともある大阪市環境局舞洲工場と隣接する舞洲スラッジセンターだ。ごみ処理場としてはカラフルで奇抜なデザインゆえに建設当時は賛否があったが、今では大阪の代表的な建築のひとつとなっている。

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 そのフンデルトヴァッサーが、自身の理想の形を大地に表現した温泉施設がオーストリアに存在する。

 首都ウイーンから南に約150キロほど離れた温泉地バードブルマウ(Bad Blumau)にあるスパ施設「ログナー・バード・ブルマウ」(Rogner Bad Blumau)がそれだ。最寄駅からトウモロコシ畑の向こうに金色の玉ねぎ型の尖塔をもった建物が見える。このスパ施設は広大な敷地にスパや宿泊棟、レストラン、別荘などが点在している。それぞれの建物は丘陵地に半ば埋め込まれているような建て方となっており、中庭から散歩道をたどっていくといつも間にか緑化された別の建物の屋根の上に至るといった、不思議な配置となっている。スパ施設は室内外がつながったプールのように大きな浴槽で、深さは130センチあまり、40度弱の湯温。湯客は歩いたり、ジャグシーでのんびりくつろいだりしている。

 浴槽(プール?)はその特徴ある作品に囲まれている。カラフルな柱が立つ室内。室外プールを取り囲む緑の木々とその中に溶け込む建物群を眺めながら湯あみをしていると、日頃のストレスからゆるやかに解放される。曲線の多い建物はリラックスをもたらすのか?建物のファザードを飾るタイル細工は、地面から立ち上がり、屋上の木々につながっているように見える。そんなことを考えていると時間はあっという間に過ぎてしまう。

 夜になると、水中ライトが点灯し、建物はライトアップされる。白く浮かびあがる漆喰の壁と夜の闇が、昼間のカラフルな世界とは別の幻想空間を見せてくれる。心地よくなった夜の風を感じながら、ゆったりと泳いでいると、その浮遊感もあいまって夢の中のようだ。!

 秋になると、敷地内の木々は黄葉し、また違った風景になるそうだ。温泉好きも建築好きもどちらも楽しめるこのスパ施設。シルバーウィークに出かけてみてはいかがですか?