U字溝の深さは30センチまたは50センチである。結菜さんは10種類109匹のカエルについて調べたところ、30センチを超えられるのはわずかな数で、50センチとなると109匹全部がU字溝を超えられないことが分かった。また、吸盤を持つ大人のカエルはU字溝を上がることができるが、水の流れが速いと流されてしまって壁に取り付けず上れないことも分かった。つまり、U字溝はカエルにとって危険な場所であることが分かったのだ。

 ではどうすればカエルがU字溝から脱出できるか? そこで結菜さんが考えたのがシュロの繊維を三つ編みにして麻ひもで縛り、U字溝に垂らす仕掛けだったのだ。自然にかえる素材で、季節で枯れてなくなったりしないもの。それがシュロの繊維だった。これは、ずっと結菜さんの活動を応援してくれていた秋吉台エコミュージアムの職員(当時)であり、自然観察指導員である田原義寛さんからアドバイスをもらって試してみたものだ。

 さっそくシュロの繊維を編んで、名付けて「シュロの糸」でテストを行ったところ、吸盤があってもなくてもどのカエルもうまく上り、無事に脱出。実際にU字溝に設置し、何匹のカエルが助かったか調べるために捕獲器も設置してみたところ、28回の調査でなんと257匹ものカエルが助かった。

 実験のやり方や仕掛けは、ほぼ自力で考え取り組んだというから結菜さんの発想力や着眼点はそこらの大人顔負けである。

 どのような子育てをしたらこんな発想をする子どもが育つのだろう?母親である村田聖子(しょうこ)さんに尋ねると、特別なことはしていないと語る。

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