オーダーメイドのドレス“勇気の甲冑”を着て、トークに臨む羽海野チカさん(撮影/写真部・工藤隆太郎)
オーダーメイドのドレス“勇気の甲冑”を着て、トークに臨む羽海野チカさん(撮影/写真部・工藤隆太郎)
対談中のヤマザキマリさん。友人の晴れの舞台に、在住先のイタリアから駆けつけた(撮影/写真部・工藤隆太郎)
対談中のヤマザキマリさん。友人の晴れの舞台に、在住先のイタリアから駆けつけた(撮影/写真部・工藤隆太郎)
受賞者に贈られた鉄腕アトムのブロンズ像。これが大きな騒動を起こした?!(写真提供:手塚治虫文化賞事務局/ブロンズ像制作:横山宏氏)
受賞者に贈られた鉄腕アトムのブロンズ像。これが大きな騒動を起こした?!(写真提供:手塚治虫文化賞事務局/ブロンズ像制作:横山宏氏)

 5月30日に開催された、第18回度手塚治虫文化賞(朝日新聞社主催)の贈呈式と記念イベントで、羽海野チカさんの公開対談が行われた。羽海野さんは、ファッションデザイナー・丸山敬太氏がこの日のために手がけた、ベージュ色の小花柄レースがあしらわれたドレスに、同じく「KEITA MARUYAMA」の白いユニコーン(羽海野さん曰く「ユニコ」)の刺繍が入った黒のカーディガンというコーディネートで登場。羽海野さんがイベントで一般読者の前に姿を見せるのはデビュー以来、初めて。

【手塚治虫文化賞贈呈式・記念イベントの写真はこちら】

 贈呈式では、選考委員・ヤマダトモコさんからの選考経過報告に続いて、各受賞者への賞の贈呈とスピーチが行われた。『3月のライオン』でマンガ大賞に輝いた羽海野チカさんは、「私が初めて買ったマンガは手塚先生の『リボンの騎士』でした。まだ近所に本屋さんがなかったので、小学校のそばの駄菓子屋さんで買いました。ドレスも動物も、もう本当にかわいくて、まねしてたくさん描きました。カレンダーや広告の裏に、家中の紙にいつも絵を描いていて、それで今日まできました。なので、今回は手塚先生のお名前のついた賞をいただけて、とても嬉しいです。小さい頃、どうしても人の輪に入れない子どもだったんですけれども、マンガはいつもそばにいてくれました。だから今度は私が、そういう子たちのそばにいられるようなマンガを描けたらいいなと思っていて、これからも一生懸命描いていきたいです。いつも一緒にマンガを作ってくれている担当編集の友田さんとアシスタントのみんな、応援して読んでくださっている読者さんに感謝します。どうもありがとうございました」と語り、会場から温かい拍手が送られた。
 
 式後の記念イベントでは、藤子不二雄(A)さんと永井豪さんの対談に続き、羽海野さんとヤマザキマリさんの公開対談が行われた。長年の友人であるヤマザキさんとの対談では、『3月のライオン』の名シーン誕生エピソードや、鉄腕アトムのブロンズ像にまつわる驚きのエピソードなどが披露され、客席を沸かせた。

 贈呈式から1週間以上が経ち、羽海野チカさんに改めて「記念対談を振り返って今、思うこと」を伺った。

「藤子不二雄A先生と永井豪先生の貴重な対談が、本当に楽しくて楽しくていっぱい本気で笑わせていただき、そして、『まんが道』と『愛…しりそめし頃に…』を何度も読ませていただいていた私には、A先生のトキワ荘でのお話が出来ることならずっと聞いていたいほど沁みました。
ヤマザキマリ先生との対談は、明るくて楽しいマリ先生のおかげで、緊張をせずに楽しくお話をさせて頂くことができました。マリ先生、本当にありがとうございました」(羽海野チカ)

 羽海野さんはトークショーで、作品と作者自身が一致しているものはやっぱり面白いと話していたが、羽海野作品も彼女自身がにじみ出た、素晴らしい作品だといえる。ふんわりとしたイメージの中にも、しっかりと芯の通った強さを感じさせる羽海野チカさん。普段、公の場に現れないだけに、会場に足を運んだファンにとっては貴重な体験となったはずだ。