相続増税を打ち出していた民主党政権が退陣し、自公政権が復活することになった。だが、日本の財政状況や国民感情を考えると、消費増税だけではなく、「資産」への課税強化は避けて通れない。そんな相続税を少しでも減らすための方法として、専門家は生前贈与をすすめる。

 生前贈与をすると、贈与税がかかり、税率は相続税より高い。しかし、年間110万円の非課税枠(基礎控除額)を活用する「コツコツ生前贈与」で、大きく節税することができる。税理士法人レガシィ代表社員税理士の天野隆さんが説明する。

「親から子へ一度に1千万円を贈与すると、231万円の贈与税がかかります。でも毎年100万円ずつ、10年にわたって贈与すれば、原則として税金はゼロ。基礎控除額を目いっぱい使い、10人の子や孫に毎年110万円ずつ贈与すれば、10年で1億1千万円もの財産を非課税で贈与できる。広く、長期間にわたって、少しずつ贈与するのがコツです」

 注意しなければいけないのは、税務署に「連年贈与」の疑いを持たれないようにすることだ。

「毎年同額の110万円を10年間贈り続けると『1100万円の贈与を分割して行った』とみなされ、贈与税をかけられる恐れがあります。そうならないために、ある年はあえて115万円にして5千円(超過分5万円×税率10%)の贈与税を払ったり、年によって贈与の時期をずらしたり、毎年違った理由で行っているようにする工夫をしましょう」(天野さん)

 相続開始から遡(さかのぼ)って3年以内に贈与した分は、相続財産に加算されて相続税額が計算される。このため、『生きているうちに相続税をゼロにする方法』(幻冬舎)の著者で、マックス総合税理士法人の税理士・武石竜さんは次のように助言する。

「まだ生前贈与を始めていない人は年内に12年分、年が明けたらすぐ、13年分の贈与をしましょう。早め早めに行ったほうが、『3年内加算』に該当する可能性が低くなりますから」

週刊朝日 2013年1月4・11日号