日銀によれば、日本の家計は現金と預金だけで839兆円も保有している(昨年9月末)。これが、銀行が国債を買う原資となっている。投資助言会社「フジマキ・ジャパン」の代表、藤巻健史氏はこのお金の動向によっては、財政はただちに危機に直面することになりかねないという。

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 現在は、銀行がギリギリのところで国債を買い支えている状況です。銀行のお金がなくなれば、国が借金しようとしても、お金の貸手がいなくなるわけです。国債に頼りすぎている財政の破綻を意味します。

「政府が資産を持っているから財政破綻の心配はない」という意見もありますが、そういう問題ではありません。

 安倍晋三内閣は、今回の補正予算と来年度予算で計53.2兆円の国債を新たに発行する案を決めました。資産超過だろうが何だろうが、銀行から新しいお金が入ってこない限り、国家公務員の給料も尖閣諸島を守るお金も不足するのです。企業で言えば現金不足による「黒字倒産」です。銀行の借金が返せる資産を持っているかどうかの問題ではありません。明日落ちる手形分の現金があるかどうかの問題なのです。

 財政破綻しても、その後の大幅円安によって日本は大回復すると信じています。未来は明るいのです。財政破綻が不可避であるならば、それを早め、それに続く日本再生も早めた安倍首相は将来評価されるかもしれませんね。褒めているのか皮肉なのか、わかりませんが。

週刊朝日 2013年2月22日号

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藤巻健史

藤巻健史

藤巻健史(ふじまき・たけし)/1950年、東京都生まれ。モルガン銀行東京支店長などを務めた。主な著書に「吹けば飛ぶよな日本経済」(朝日新聞出版)、新著「日銀破綻」(幻冬舎)も発売中

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