手ブレ補正を内蔵した大口径標準ズーム

 いまや35mm判フルサイズ用標準ズームレンズのフラッグシップとして定着した24~70mmF2.8の大口径標準ズームレンズは、画質にうるさいプロやハイアマチュアにも愛用者が多く、各社ともに性能面にチカラを入れている。
 このクラスのレンズにも手ブレ補正機能を内蔵すれば便利なのは間違いない。しかし、レンズ内手ブレ補正は内蔵レンズを動かしブレを補正するという、言わば「毒をもって毒を制する」方式。性能面での信頼性、設計の難しさもあるのだろう、各社ともに手ブレ補正の採用は見送られていた。果敢にも最初にこれに挑んだのが、タムロンが2012年に発売したSP 24-70㎜ F/2.8 Di VC USDで、このクラスとしては低価格で話題にはなったものの、描写面で注目されたとは言いがたい。
 新しく登場するニッコールの24~70mmはフルサイズ用大口径ズームレンズとしても、同社初となる手ブレ補正機構を内蔵している。前モデルのAF-S NIKKOR 24-70㎜ f/2.8G EDから8年ぶりのモデルチェンジだ。


室内蛍光灯による照明での撮影。全体にピントが合うように絞り込むと当然低速シャッターになる。近距離では手ブレ補正の効果は薄れるはずだが、手持ち撮影でもブレずに撮影できた●24mm時・D810・AE(絞りf8・13分の1秒・-0.3補正)・ISO400・AWB・RAW
室内蛍光灯による照明での撮影。全体にピントが合うように絞り込むと当然低速シャッターになる。近距離では手ブレ補正の効果は薄れるはずだが、手持ち撮影でもブレずに撮影できた●24mm時・D810・AE(絞りf8・13分の1秒・-0.3補正)・ISO400・AWB・RAW


 手ブレ補正(VR)を内蔵しても、前モデルの性能を上回るとニコンはアナウンスしている。周辺域まで性能向上が行われ、ニコンD810のような高画素機においても満足のいく性能になっている。EDレンズによる色収差補正、非球面レンズによる各種収差補正、ナノクリスタルコートが施され、汚れや水滴が付着しづらいフッ素コートも採用されている。
 手ブレ補正の効果は最大で4段分。低輝度下においてもカメラを高感度設定にしなくても済み、室内や夜間での手持ち撮影に向く。また防塵・防滴と耐衝撃性にも配慮されている。絞りは電磁絞り(Eタイプ)になり高速連写時のAEの精度が向上している。ただし、Eタイプ対応のカメラでないと使用できず、フィルムニコン一眼レフでは使用不可(デジタル一眼レフでも機種による)だ。そのせいか、AF-S NIKKOR 24-70㎜ f/2.8G EDも併売予定だ。
 レンズはかなり巨大で、全長は約154.5mm、前モデルより21.5mm長く、重量も約170g重い約1070g。箱から取り出した時に思わず「デカイ」と声が出てしまったが、性能追求ゆえの結果だろう。前モデルの改良と手ブレ補正内蔵を待ち望んだユーザーなら耐えられるはずだ。


ズームレンズとは思えない美しく滑らかな、雰囲気のよいボケ味でポートレート撮影にも向いている。合焦点は繊細でシャープ。コントラストも良好で高品位な描写である●70mm時・D810・AE(絞りf4・1000分の1秒)・ISO200・AWB・RAW
ズームレンズとは思えない美しく滑らかな、雰囲気のよいボケ味でポートレート撮影にも向いている。合焦点は繊細でシャープ。コントラストも良好で高品位な描写である●70mm時・D810・AE(絞りf4・1000分の1秒)・ISO200・AWB・RAW


デザイン
スマートな鏡胴で、美しいデザインだが、大口径・中望遠レンズ並みの長さと重さ。携行には覚悟が必要だ

使用感・操作感
AFも素早く合焦、気持ちよく使える。たしかに重いのだが、撮影時には重量を忘れるバランスのよさ。フードには不用意に外れないようロックボタンがある

描写性
絞りや焦点域による性能変化はほぼないといってよい。開放は完全に実用。手ブレ補正の利きはかなり良好

◆ 赤城耕一


* * *
●焦点距離・F値:24~70mm・F2.8●レンズ構成:16群20枚(EDガラス2枚、ED非球面レンズ1枚、非球面レンズ3枚、高屈折率レンズ1枚)●最短撮影距離:0.38m●最大撮影倍率:0.28倍●画角:84°~34°20′●フィルター径:Φ82mm●大きさ・重さ:約Φ88.0×154.5mm・約1070g●価格:税別28万7500円(実売27万9450円)