世界中のスラム街や犯罪多発地帯を渡り歩くジャーナリスト・丸山ゴンザレス。取材やインタビューの基本は英語である。それもフィリピンで習得したアジアン・イングリッシュ。ブロークンであるがゆえに、恐ろしくも奇妙で日常生活ではまず使うこともないようなやりとりも生まれてしまう。そんな危険地帯で現地の人々と交わした"ありえない英会話"を紹介する本連載、今回は危険地帯でよく耳にするFから始まるあの放送禁止用語、いわゆるFワードについて。昨年、AKB選抜総選挙の開票イベントで結婚を発表したメンバーに対し、女優・大島優子が動画でこの言葉が書かれた帽子を見せて苦言を呈し、炎上したことも記憶に新しい。そんな危険ワードを「使いこなしてみたい!」という衝動にかられたゴンザレスはいったいどうなったのか?

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 世界の常識は日本では非常識であるということが、時々議論のテーマとされることがある。それぐらい日本人には実感として理解できていないことがあるのだ。そのなかのひとつに言葉の問題があると思う。たとえば映画や海外ドラマを見ていると「ピー音」が入って消されている単語がある。いわゆるFワードである。国際的に、特に英語圏ではタブーとされており、公の放送はもちろん、子どもに聞かせてはいけない言葉として扱うことが常識になっている。一方、日本国内においては、言語の違いもあり、堂々と「Fuck」と表現されていても規制されない(さすがにテレビなどの公の場では飲ましくないだろうが、現状では自主規制の枠を出ていない)。

 では、欧米に行くとFワードをまったく耳にしないかといえば、英会話のなかではよく耳にする。Fワードは相手をひどくののしったり、「クソ」と強調的な意味で使われたりするので、私が取材するスラムなどでは、わりと日常的に使われる(あくまで私の肌感覚だが)。実際の使用について、一例として挙げてみよう。

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丸山ゴンザレス

丸山ゴンザレス

丸山ゴンザレス/1977年、宮城県出身。考古学者崩れのジャーナリスト。國學院大學大学院修了。出版社勤務を経て独立し、現在は世界各地で危険地帯や裏社会の取材を続ける。國學院大學学術資料センター共同研究員。著書に『世界の危険思想 悪いやつらの頭の中』(光文社新書)など。

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