東京都医師会の尾崎治夫会長/撮影・亀井洋志
東京都医師会の尾崎治夫会長/撮影・亀井洋志
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 この冬、新型コロナウイルス感染症とインフルエンザの同時流行に備え、身近な診療所やかかりつけ医が両方の検査ができる「診療・検査機関」を担う。発熱があった場合、まずはかかりつけ医に電話で相談してから受診するが、感染者が出た時の風評被害を案じて尻込みする医者も少なくない。私たちは希望通りの検査や診察を受けることができるのだろうか。時に国の対応を厳しく批判する“物言う会長”、東京都医師会の尾崎治夫会長に聞いた。

【医師1335人調査】いま医師が望む「新型コロナ対応」策とは?

――現在、東京都で新型コロナを診ることができる診療所はどのくらいあるのですか。

「いま、約1800カ所の診療所でコロナのPCR検査ができるようになっています。(都の人口1400万人に対し)1万人あたりに1カ所あれば対応が可能と考え、1400カ所を目標にしてきましたから、クリアしています。ただ、ピーク時が問題です。インフルエンザが最も流行した年には、一日に東京中で6万5千件くらい検査しています。1800カ所だと1カ所当たり一日40件程度になります。他の患者さんを診ながら、40人の発熱患者の検査をするのは不可能です。一日に10人くらいが限界でしょうから、6千カ所くらいは必要になります」

――新型コロナとインフルエンザは、症状だけでは区別するのは難しいと思いますが、検査方法の両立はできるのですか。

「コロナもインフルエンザも従来は鼻咽頭(いんとう)ぬぐい液といって、鼻の奥の咽頭まで綿棒を入れて検体を取っています。くしゃみを誘発しやすく、飛沫(ひまつ)による感染のリスクがありました。医師が一人しかいないような診療所で、そのつど防護服を着てフル装備するのは現実的ではありません。

 これからは鼻前庭といって、患者さんに鼻の入り口付近を綿棒で30秒くらいこすってもらう。この採取法でコロナもインフルエンザも両方同時に検査することが可能になるといいます。患者さんが一人でできるので、医師は感染リスクを回避できます。
 小児科の先生はインフルエンザだけではなく、溶連菌やRSウイルスなど他の種類の検査をたくさんしています。コロナは、子どもはほとんど重症化しません。ですから、小児科はコロナ以外の感染症をしっかり診ることが冬の感染症対策で重点的になってくるでしょう」

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もうかるものには手を出し、リスクは避ける医者は許せない