「新婚さんいらっしゃい!」の司会に大抜てきされた藤井隆
「新婚さんいらっしゃい!」の司会に大抜てきされた藤井隆

 1971年に始まった『新婚さんいらっしゃい!』(ABCテレビ)は、実に半世紀以上前から放送されているテレビ界の文化遺産的な番組である。長く続く番組は私たちの日常にすっかり溶け込んでいるので、誰もが当たり前のようにそれを眺めている。

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 だが、一歩立ち止まって冷静に考えてみると、『新婚さんいらっしゃい!』というのは、ほかに類を見ないなかなか珍しい形の番組であることに気付かされる。

 レギュラーの出演者は司会を務める桂文枝と山瀬まみの2人のみ。毎週さまざまな一般人の新婚カップルをゲストに迎えて、彼らの馴れ初めなどの話を聞いていく。芸能人ではない一般人のトークだけで30分の番組を構成するというのは、現代のテレビの常識からするとなかなか挑戦的なことをやっていると言える。

 それが成立するのは、キャラが立っていて面白い一般人を発掘する番組側のノウハウと、彼らの話を引き出す司会者の卓越した技術があるからだ。『新婚さんいらっしゃい!』は、一見するとほのぼのとしたゆるい雰囲気の番組に見えるが、実は最も難しいことに挑戦し続けているスリリングな番組なのだ。

 1月30日、そんな『新婚さんいらっしゃい!』の新司会者を藤井隆が務めることが正式に発表された。1971年の番組開始から50年以上にわたって司会を務めた桂文枝に代わって、藤井が番組の顔として歴史を作っていくことになる。アシスタントも山瀬まみから井上咲楽にバトンタッチされる。

 文枝が番組を降板することが報じられたときから、後任が誰になるかというのは世間でも噂になっていた。その中でも「藤井隆待望論」が持ち上がっていた。そして、実際に彼が大役を務めることになったので、この人選にはほとんどの人が納得したはずだ。

 個人的にも藤井の抜擢は大賛成である。彼はこの番組の司会者にふさわしい3つの要素を備えていると思うからだ。

 1つ目は「誰に対しても礼儀正しく、好感度が高い」ということだ。芸人というのは、ときには笑いのためにあえて他人を悪く言ったり、厳しい言葉を投げかけたりすることがあるものだ。それが行き過ぎると、一般の人に嫌われたり避けられたりしてしまうことがある。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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