金正恩氏の横に立つ娘(朝鮮通信)
金正恩氏の横に立つ娘(朝鮮通信)

 日本海に向けて頻繁にミサイル発射実験を繰り返す北朝鮮に、気になる動きがあった。金正恩総書記の娘と見られる少女が、突如として北朝鮮メディアに登場するようになったのだ。まるで正恩氏の「後継者」のように扱われるこの少女、何者なのか。

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 色白で満月のように丸々とした顔、金ボタンの付いた黒いロングコート姿の少女が「父親」の傍らに立っている。

 北朝鮮の国営メディア、朝鮮中央通信は3月20日、戦術核運用部隊が核弾頭による攻撃を想定した弾道ミサイル発射訓練を19日に実施した、と報じた。訓練には金正恩総書記が立ち会い、娘と見られる「ジュエ」氏も同行した。

 ミサイル実験や公式行事に姿を見せ、メディア露出が相次ぐジュエ氏に注目が高まっているが、今回発表された現場写真では向かって右隅に立つ軍服姿の人物にも関心が集まった。サングラスにマスクを着けて、さらにモザイクで顔がわからないようにしているのだ。北朝鮮がこの「謎の男」を登場させた狙いについて日本大学国際関係学部の川口智彦准教授(北朝鮮地域研究)はこう見る。

「この時の訓練は、核使用について指揮命令系統を確認することが目的でした。モザイクの男の正体は、おそらく正恩氏の核使用命令を直接執行する指揮官だと思います。核使用の執行という極めて重要な訓練にジュエ氏を立ち会わせ、あえて謎めいた人物を登場させた。このことは、ジュエ氏を権威付ける逸話として記録されるはずです」

 ジュエ氏が初めてお披露目されたのは、昨年11月18日。ICBM(大陸間弾道ミサイル)「火星17」の発射実験に成功したと発表したが、その現場に正恩氏とともに突如として現れたのである。北朝鮮メディアは「愛する子女様と女史(妻・李雪主[リソルジュ]氏)とともにおいでになった」などと報じた。

 火星17は米国本土すべてを射程に収め、北朝鮮は「怪物ミサイル」と呼んでいる。昨年3月、北朝鮮は火星17の発射実験に成功したと大々的に宣伝したが、実はカムフラージュで開発済みの火星15を打ち上げたとの見方が広がっていた。

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