池上彰(いけがみ・あきら)/1950年、長野県生まれ。著書に『新・世界から戦争がなくならない本当の理由』『私たちはなぜ、学び続けるのか』など(撮影/写真映像部・東川哲也)

 旅先で、自宅でゆっくり、どこで読むかはそれぞれだが、ぜひ忙しい日常を離れて本と過ごす時間を。ジャーナリスト・池上彰さんに、おすすめの本と書店について聞いた。AERA 2024年4月29日-5月6日合併号より。

【写真】池上彰さん、おすすめの3冊はこちら

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 1冊目は『続 地方記者』。私の職業人生を決定づけた本です。奥付を見ると、「昭和37年8月10日発行」となっています。定価320円です。

 私が小学校6年生のときに自宅近くの書店で見つけ、小遣いで購入しました。『地方記者』が出た後の続編だったのですね。

 地方で働く新聞記者の他社との特ダネ競争あり、警察より先に容疑者を突き止めたり、淡い恋物語があったりと、すっかり魅了され、「将来は地方で働く新聞記者になるぞ」と決意しました。結局はNHKに入ったのですが、希望通り、島根県や広島県で勤務しました。

 2冊目は柳田邦男『マッハの恐怖』。柳田さんはNHK社会部の先輩であり、憧れの存在。彼が社会部時代の1966年に起きた三つの航空機事故の謎に迫ったドキュメント。「記者というのは、ここまで綿密に取材をするものなのか」と驚愕した名著です。

 柳田さんは、やがてNHKを中途退社し、フリーランスのジャーナリストとして活躍します。私も遅まきながら、同じ道を選択しました。

 3冊目は吉野源三郎の『君たちはどう生きるか』。私が小学生のときに父が購入してくれた小説です。愛称「コペル君」の旧制中学時代の経験を通して、人間いかに生きるべきかを考えさせてくれました。

書店はストレス解消に

 フリーランスになってある民放テレビの番組で西武池袋本店の中にあったリブロ池袋本店でロケしたところ、翌日大勢の人が押し寄せ、私が番組の中で取り上げた本が、あっという間に売り切れてしまったと聞かされたとき、テレビの影響力の強さを実感して怖くなりました。

 書店に行くのは気分転換であり、ストレス解消策。ストレスが溜まっているとき、書店で大量の書籍を衝動買いすることで解消になっています。その結果、読み切れない大量の書籍に囲まれています。(寄稿)

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