大友克洋の「AKIRA」は海外のアーティストにも多大な影響を与えた=2024年3月、Books Kinokuniya Tokyo(撮影/篠塚ようこ)

 世界で日本の漫画が読まれているが、フランスではどのように浸透したのか。漫画文化が受け入れられた理由、影響力を現場の人びとに聞いた。AERA 2024年4月8日号より。

【写真】鳥山さんが描いた「孫悟空」とサイン

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 アメリカに並ぶもうひとつの漫画大国、フランスの市場はどうか。アメリカにアメコミがあるように、フランスには「バンド・デシネ」と呼ばれるコミックの伝統がある。フランスで初めて漫画を出版したのはグレナというバンド・デシネの出版社。大友克洋の『AKIRA』のフランス語訳版を1989年に出版した。

 講談社国際室(現ライツ・メディアビジネス本部国際ライツ事業部)で約20年間漫画の海外版権を担当した安藤由夏さんはこう言う。

「『AKIRA』担当編集者であった故由利耕一氏と、大友克洋さんに多大なアドバイスやご協力を得ながら進めて参りました。フランス版刊行が始まった数年後にはフランスでは、子ども向けでも一般成人向けでもない、それまでになかったヤングアダルト向けのコミックを新ジャンルである『AKIRA』と呼称していたくらい反響がありました。漫画に詳しくなくとも『AKIRA』は知っているというアーティストやクリエイターは多く、『MANGA』という枠を超えて一つの芸術作品として世界のアーティスト、クリエイターに影響を与えたのではないかと思います」

 その後「ドラゴンボール」シリーズや「ONE PIECE」、「NARUTO」などがフランスでも出版された。

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