※写真はイメージです(Getty Images)

 これまで多くの作品の中で描かれてきた「並行宇宙」、そして別の宇宙にいるもう一人の自分の存在。これらは創作にすぎないのか、それとも実在するのか、気になる人も少なくないだろう。宇宙物理学の専門家はどう見るのか。物理学者・須藤靖氏の新著『宇宙する頭脳 物理学者は世界をどう眺めているのか?』(朝日新書)から一部を抜粋、再編集して解説する。

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我々のユニバースと同じ宇宙が存在しうる理由

 現在のユニバースの年齢は138億年である。したがって、現在観測可能な範囲は、光が138億年かかって我々に到達可能な領域に限られる。これは、我々を中心とした半径138億光年の球の内部であり、(現在の)地平線球と呼ばれる。

 しばしば、「宇宙の外には宇宙があるのですか?」と聞かれることがある。これは正確には「我々のユニバースの外には別のユニバース、あるいはマルチバースがあるのですか?」と解釈すべきなのだろう。その場合には、答えはイエスとなる。

 我々の住むマルチバースの体積はほぼ無限である。したがって、半径138億光年のこのユニバースの外には、無数の別のユニバースが連なっているはずだ。仮に今からさらに138億光年経てば、隣のユニバースも観測可能となり、我々のユニバース(地平線球)の定義が拡大して半径276億光年の球になる。原理的には時間が経てば経つほど観測できる地平線の範囲が広がり、このマルチバースの中で我々のユニバースが占める体積も徐々に増大する。

『宇宙する頭脳』(朝日新聞出版)
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