東京大学経済学部合格の女子生徒(18)/好きな書道と環境問題への意識を繋げて論文を作成。行動経済学を学び持続可能な書道を目指すソーシャルビジネスの立ち上げが夢(撮影/宮本さおり)

 近年、国公立大学でも合格への道が多様化している。難関国立大の合格を手にした生徒はどのような道を経てきたのか。推薦入試で東京大学に合格した生徒の例を紹介する。AERA 2024年4月1日号より。

【写真】バナナペーパーの活動で集めた資料はファイル6冊分に

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 国公立大学といえば、大学入試センター試験をクリアし、二次試験を受けて合格を手にするのが主流の時代に育った親世代。ところが今は、国公立大学でも推薦入試を導入する大学が多くある。難関国公立大学の推薦入試とはどのようなものなのか。

 東京大学は、2016年度入試から推薦入試を始めた。今年は91人が合格を手にしている。その中の一人を送り出したのが東京都にある私立晃華学園中学校高等学校。昨年に続き2年連続での合格となった。いったいどのような生徒が合格したのか。

 今年合格した女子生徒は小学校から晃華学園。入学後に塾に通ったのは英検取得の講座程度、大学入試も全て学校の教員を頼りに進めていった。

中学3年から大学訪問

 同校は生徒側の発案で始まったSDGsの活動が有名だが、今回合格した生徒もこの活動に参加、環境に優しいバナナペーパーの普及に取り組んでいた。

 彼女は学校の書道同好会で書道を楽しんでいた。書道に欠かせないのが紙。ところが、紙の生産で森林破壊が起きていることを知った。書道文化と紙資源の両方を守るため、持続可能な紙の研究を始めた。

 リサーチする中で知ったのがバナナペーパーの存在だった。アフリカ・ザンビアで栽培されるオーガニックバナナの茎を原材料とするバナナペーパーは環境負荷が少ない。これに日本の和紙の技術が加わって作られる紙は、和紙技術の伝承にもつながる。高1で本格的にバナナペーパーの普及活動を開始、小学校で折り紙ワークショップを開くなど、精力的に動いていった。

 23年には仲間と共に環境省主催の第8回全国ユース環境活動発表大会(全国大会)に出場、協賛企業特別賞を受賞している。東大の推薦入試はこの活動を軸に16ページに及ぶ論文を仕上げて出願した。

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