脳梗塞データ
脳梗塞データ

「MRIでは、起きたばかりの新しい脳梗塞だけを映し出す方法で、急性期の脳梗塞かどうかを調べます。血管が詰まりかけている、あるいは詰まったばかりで神経細胞が完全に壊死していない場合は、ダメージを最小限におさえるためすぐに血流を再開通させる治療を始めます」(森本医師)

 急性期の脳梗塞の治療は、薬で血栓を溶かす「血栓溶解療法」と、器具で血栓を取り除く「血栓回収療法」が主となる。

 血栓溶解療法では、組織型プラスミノゲン・アクティベーター(t−PA)という薬を点滴し、血栓を溶かす。ただし、この治療は発症から4・5時間以内に限られる。

「脳梗塞を起こして時間が経つと、その血管はダメージにより血管壁がもろくなります。t−PAで血栓が溶け、血管が再開通するともろくなった血管から出血するリスクがあるため、発症後4・5時間を過ぎたらt−PAは使用できません」(同)

 また、以前は就寝中などに発症した発症時刻が不明の人には治療できなかったが、2019年に適応が拡大された。MRIでは、起こったばかりの変化を描出できる画像(DWI)と、描出するまでに3~6時間かかる画像(FLAIR)があり、DWIでは脳梗塞がみられるもののFLAIRではみられないというミスマッチが生じた場合、4・5時間以内に発症したと判断できる。

「発症時刻がわからない人でも、2種類のMRI画像で4・5時間以内かを判断した上で、血栓溶解療法ができるようになりました。これまで治療できなかった人が、t−PAにより救われる可能性が広がったといえます」(井口医師)

 発症後4・5時間以上経過した場合や、出血しやすい病気があるなどの理由でt−PA治療ができない場合、血栓が大きく溶かしきれない場合は、血栓回収療法をおこなう。カテーテルを挿入して血栓を取り除く治療法で、専用の器具で血栓を絡めとる方法と、血栓を吸引する方法がある。この治療は原則として発症後24時間以内ならできるが、細い血管にカテーテルを通すため出血のリスクを伴う。技術を要する治療であり、実施できる病院は限られる。

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経験豊富な医師のいる病院は、血栓の約9割は回収