エンゼルス時代の大谷選手と水原氏=2023年3月

 2017年に大谷選手がエンジェルスに入団した当時から専属通訳として、影のように寄り添っていた水原氏は、米国でも野球ファンにはよく知られた存在で、好感度も高かった。大谷選手は2月の会見で水原氏について聞かれたときに、「(友人ではなく)ビジネスの関係」と答えている。だが英語のメディアは、ずっと行動を共にしていた水原氏のことを、大谷選手の「長年の友人である通訳」と形容している。 

「通訳が雇用主である大谷の資産を無断で使い込んだのであれば、信頼関係を裏切る許しがたい行為です」 

 米国大手に務める某スポーツエージェントはそう語る。 

「その一方で、もし実際に大谷の口座から直接違法ブックメーカーに振り込みがなされていたのなら、状況は少し複雑になる可能性もあります」 

水原氏の通訳は秀逸だった

 今後調査が進むにつれて、さらに多くの事実が明るみに出ていくのだろうが、一つ確実なのは、水原氏の代役はそう簡単には見つからないであろう、ということだ。 

 筆者は高校留学を機に渡米して、現在米国在住40年以上になる。日米の各種通訳や翻訳の仕事に携わった経験も少なからずあるが、そうした経験を踏まえてみても水原氏の通訳は秀逸だった。事務的に右から左へと言語を変換するだけでなく、細かいニュアンスを正確にくみ取り、日本と米国の微妙なカルチャーギャップを上手に埋めてきた。腕の良いプロの通訳はそれなりの報酬を出せば見つかるとはいえ、彼のような人柄を感じさせる、しかもキャッチボールの相手までできる通訳はそうはいないだろう。それだけに今回のニュースは衝撃であり、とても残念であった。 

 水原氏はその後、ギャンブル依存症であることを告白している。今後彼が法的な制裁を受けることになるのかはまだわからないが、少なくとも大谷選手に対しての負債を返済していく責任はある。きちんと誠実に対処した上で依存症の治療を受け、いずれ社会復帰を果たしてくれることを願っている。 

(米国在住ジャーナリスト・田村明子)