「今からお伝えする内容を正しく理解し、使うことができている人は、ほんの一握りです」。このように相手に言われると、話のネタ(内容)がなんであれ、気になってしまいませんか?(写真はイメージです)(gettyimages) 

 話の内容は同じでも、思わず引き込まれて話を聞いてしまう人と、そうでない人がいます。「相手に『聞きたい!』と強く思わせるには『希少性の型』を使えばよい」と説くのは、『「よい説明」には型がある。』の著者、犬塚壮志氏。希少性の型を使った説明とは、どんなものなのでしょうか? 本記事では、その型を使いこなすコツと、真似するだけで使える、即効フレーズを合わせて紹介します。(大学受験専門塾「ワークショップ」情報科講師/株式会社士教育代表取締役 犬塚壮志)

世阿弥も認めた「ここだけの話」が持つ威力

「今からお伝えする内容を正しく理解し、使うことができている人は、ほんの一握りです」

 このように相手に言われると、話のネタ(内容)がなんであれ、気になってしまいませんか? そのような感情が湧き起こる1つの要因が、「希少性」です。

「希少」とは、数量が非常に少ないことです。情報伝達における希少性とは何でしょうか? 私は、情報伝達の希少性というものを、次のように定義しています。

「情報伝達における希少性=他では聞けないここだけの話や、知っている人が少ない話」

 そのネタを話せる人が少ない、限られた人しか教えてもらえない、めったにその話をしない……そのネタが希少になる理由はさまざまですが、そのネタに接触できる「機会」が非常に少ないことをアピールする情報伝達の手法を、私は「希少性の型」と呼んでいます。

 希少性が「面白さ」に直結していることについては、かの世阿弥も『現代語訳 風姿花伝』(水野聡訳、PHP研究所)の中でこう述べています。

「申楽においても人の心に珍しいと感じられる時、それがすなわち面白いという心なのだ。花、面白い、珍しい。これらは三つの同じ心である」

 申楽(さるがく)とは、平安時代に栄えた庶民の娯楽のための芸能で、「狂言」や「能」の前身です。そんな申楽を大成させたのが世阿弥です。

 舞台芸能と「話をする」ことには、多少の違いがあるかもしれません。しかし、表現をして聴衆を魅了するといった意味では両者には通ずるところがあり、世阿弥の言葉からも「珍しいということは、人の心を動かす面白さがある」といったヒントを得られると私は考えています。

「日本人の0.3%しか知らないことですが……」

 それでは、どのように表現すれば、ネタの「希少性」を演出できるのでしょうか? もっともシンプルな方法は、このように直接的に前置きを付ける話し方です。

【即効フレーズ】
・「ここだけの話ですが……」
・「まだ表に出ていない話なのですが……」
・「ほんの一握りの人しか知らないことなのですが……」
 ここで大事なのは、その知識や情報が「本当に希少である」という事実です。「ここだけの話」といいながら、自分のSNSなどで公にしていたら、信用はなくなってしまいますよね。

 あるいは、次のようなフレーズで、希少性を数値で暗に示す方法も効果的です。

【即効フレーズ】
・「日本人の0.3%程度しか知らないことなのですが……」
・「自社でも片手で数えられる人しか知らないことなんですが……」
 さらに、「禁止事項」として表現する方法もあります。

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