ソロ公演で歌う沢田研二さん=2013年1月6日、東京都渋谷区の渋谷公会堂(当時)

 昭和の歌番組を振り返るテレビ番組や、昭和にタイムスリップするドラマのせいか、「昭和歌謡」という言葉を目にすることが多い。昭和歌謡といえば、さまざまな歌手の名前が思い浮かぶが、沢田研二は欠かせない1人だろう。いまも精力的にライブを行う、沢田研二の魅力とは? 音楽評論家のスージー鈴木氏に聞いた。

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 沢田研二の魅力を語る前に、「昭和歌謡」に魅了される人が多い理由を、人気音楽評論家のスージー鈴木氏はズバリ「みんな歌がうまいから」と断言する。

「“昭和歌謡”は、テレビ番組で懐メロとしてよく特集されるわけですが、ひとつ言えるのは、今テレビなどであらためて取り上げられる当時の歌手が、めっちゃ歌がうまいということ。

 私がよく例にあげるのが、ちあきなおみの『喝采』。あれほどまでにドラマチックな歌詞でみごとな歌唱力の楽曲が、昭和の頃は、歌番組で日常的に流れていたというのは驚きですよね。

 岩崎宏美、山口百恵、そして、松田聖子や中森明菜などなど、とにかく抜群の歌唱力がある歌手がいたというのが、いまの音楽シーンに比べたときの昭和歌謡の素晴らしさ。懐メロとして聴いている人たちだけでなく、若い世代も抜群の歌唱力を喜んで聴いているのだと思うんです」

沢田研二のパワーとデリケートさ

 沢田研二についても言うまでもない。スージー鈴木氏が沢田研二の魅力で真っ先にあげるのは、もちろん歌唱力だ。

「1975年に『時の過ぎゆくままに』、77年に『勝手にしやがれ』などの大ヒット曲をリリースしています。昭和50年代の沢田研二は、平成以降の完成されたロックボーカルに比べて、パワーとデリケートさが同居していてスリリングです。

 さらに、高い音域でも声が直線的にポーンと伸びて、本当に美しい声をしています。まずは歌そのものの魅力が、あの見事な歌唱力が認められているのだと思います」

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