鴻上尚史さん(撮影/写真映像部・小山幸佑)
鴻上尚史さん(撮影/写真映像部・小山幸佑)

 不本意な仕事を押し付けられることを我慢し過ぎた挙げ句に爆発してしまう癖があると悩む40歳女性。喧嘩腰にならず冷静に意見を伝えられるようになりたいと望む相談者に、鴻上尚史が勧める「日常の小さな誘いやお願いを断る」ことから始める試行錯誤とは。

【相談215】爆発する前に、自分の意見を冷静に伝えられるようになりたいです(40歳 女性 アイ)

 昔から人の顔色を窺い、自分の本心よりも、「相手はこう言ってほしいんだろうな」という考えを優先し、イヤなときにイヤだと言えず、相手の望むように振る舞ってしまうことが多いです。

 父親が頻繁に怒鳴る家庭で育ったため「相手を不機嫌にさせてはいけない」「怒らせてはいけない」という姿勢が身についてしまったのだと思います。

 成人してからは職場で困ることが多いです。仕事の業務分担で、上司がやりたくない仕事が自分ばかりに振られ、自分が楽しく取り組めていた仕事を上司に奪われることが多く、何だかんだで押し切られてしまいます。

 立場や業務のバランスを見て振っているわけではなく(本来、上の立場の方がする仕事まで頼まれてしまっています)、友人に相談したところ、「押せばなんとかなる人だと思われてる」とのことでした。

 確かに、上司に急に言われるととっさに切り返しができず、返事を保留させても貰えず、「じゃあお願いね!」と言われてしまいます。

 周囲も、私が理不尽な仕事の振られ方をされているとは言ってくれますが、表立って味方ができなくてごめんね、という感じで、上司の上司は我関せずです。

 このままでは自分が辛くなる一方だと思い、権限を超えた仕事はこれ以上引き受けられない、と伝えたところ、「自分勝手だ! この仕事をやりたくないってことか!!」と怒鳴られ、それ以上話し合いができませんでした。上司は、普段は自分の言うことを聞く人間が言いなりにならなかったため、イライラしたのだと思います。

 日を変えて再度意見を言おうとしたところ、私も今までの我慢が爆発してしまい、「これ以上、自分のやりたい仕事は奪われ、権限を超えた仕事ばかりを無茶振りされるのであれば、この職場にはいられません」と喧嘩腰になってしまいました。

 前の職場も、同じような理由でずっと我慢し、ある日キレてしまい、退職しています。

 同じことを繰り返さないため、ただ我慢するのではなく、喧嘩するのでもなく、その場で自分の意見を冷静に伝えられるようになりたいですが、どうすれば良いでしょうか。

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鴻上尚史

鴻上尚史

鴻上尚史(こうかみ・しょうじ)/作家・演出家。1958年、愛媛県生まれ。早稲田大学卒。在学中に劇団「第三舞台」を旗揚げ。94年「スナフキンの手紙」で岸田國士戯曲賞受賞、2010年「グローブ・ジャングル」で読売文学賞戯曲賞。現在は、「KOKAMI@network」と「虚構の劇団」を中心に脚本、演出を手掛ける。近著に『「空気」を読んでも従わない~生き苦しさからラクになる 』(岩波ジュニア新書)、『ドン・キホーテ走る』(論創社)、また本連載を書籍にした『鴻上尚史のほがらか人生相談~息苦しい「世間」を楽に生きる処方箋』がある。Twitter(@KOKAMIShoji)も随時更新中

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