ダビンチよりスリム化されたアームを搭載したヒノトリ。左下の術者は宇山医師。(写真提供/藤田医科大学・宇山医師)

 ロボット支援手術で用いられるロボットは「ダビンチ」が「1強」の時代が長く続いたが、登場から20年以上が経過した現在、ダビンチの特許切れを受け、新たなロボットが開発され続々と登場している。ダビンチはどうなっているのか、これを追ってどのようなロボットが出てきているのかなどを、ロボット支援手術をリードする2人の医師に聞いた。11疾患のロボット手術数全国ランキングも掲載している、週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2024』よりお届けする。

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 手術支援ロボットは大きく、内視鏡カメラや鉗子(かんし)などの手術器具が付いた「アーム」、術者が座りアームを操作する「コンソール」、内視鏡カメラによる手術部位を映す「モニター」の三つで構成される。

 内視鏡カメラや鉗子が付いたアームは人の手よりもはるかに自由な方向に曲げることができ、モニターには拡大された3D立体画像が映し出される。鉗子の先端の動きは術者の手の動きより細かく動き、手振れも防止される。これらの機能によりロボット支援手術は、従来の腹腔鏡手術では治療が難しい部位や狭い空間での手術を含め、精緻(せいち)で安全・低侵襲な手術をスムーズにおこなうことが可能になる。

アームが干渉しにくいXi 一つの穴で手術できるSP

 ダビンチは1999年に初機種が登場し、2015年に第4世代となる「Xi」という機種が承認された。これについて藤田医科大学の宇山一朗医師はこう評価する。

 「アーム同士が干渉し(ぶつかり)にくい設計になっています。ぶつかるようなことがあればロボットは操作困難となり手術は中断します。これがそれまでのSiに比べ、Xiで劇的に改善されました」

 Xiの手術では4本のアームごとの穴など、合計5~6カ所の穴(マルチポート)が必要になるが、22年、4本のアームが1本にまとまり、直径2・5センチほどの穴一つで手術が可能な新機種「SP(シングルポート)」が承認された。SP開発の背景を札幌医科大学の竹政伊知朗医師は腹腔鏡手術の発展と絡めて次のように見ている。

 「マルチポートの腹腔鏡手術が標準的になってから、より整容性を高めるシングルポートの腹腔鏡手術と、より精緻な操作が可能なマルチポートのロボット手術それぞれが普及してきました。シングルポートは整容性などに優れているものの、手術の操作性では従来のマルチポートに劣ります。一方、ロボット手術(ダビンチXi)では操作性は良い一方で、手術の穴はマルチポート。そこで、ロボットでシングルポートの手術ができれば双方の課題が解決できるとして生まれたのがダビンチSPです。SPは、より簡便かつ正確に対象臓器にアプローチすることが可能です」

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メイド・イン・ジャパンのロボットも、次々承認