「他者が業務を代行できる『互いに休める組織運営』は、業務効率化やリスク管理の観点からも組織にプラスに働きます」

 その上で、大事なのは「働く個人が互いの生き方を尊重する風土」の醸成だと唱える。

「好業績との関係が注目されている従業員のエンゲージメント(会社や仕事に対する愛着や思い入れ)の高さと、同じ部署のメンバー同士の支え合いに関係がみられるという調査結果もあります。『お互い様』の社風を定着させるには個人だけでなく、チームワークを評価の軸に加える人事評価制度の改革とセットで進める必要があります」

 休暇を取りにくい企業は人材流出も招きかねない。アエラのアンケートでは、IT企業で勤務していた当時、業務外で海外研修を受ける予定で休暇申請したところ、直前に却下されたのがきっかけで退職を決意した、という50代男性の体験も寄せられた。

「休暇中の学び」の効果

 休暇制度を改定した前出のインテリジェントウェイブには、「休暇中の学び」を仕事に生かしてもらいたいという社の方針が背景にある。同社は今回の改定で、勤続5年目以上の社員を対象に最長2年間、大学院進学や海外留学、ワーキングホリデーなど自己啓発のための休職制度を新設した。

「自分が成長する機会を選び取れる環境」を重視する若手社員が増える中、留学や資格取得などのほか、将来に向けた“模索”や“充電”といった自分で使い方を設定した休暇も含めて休暇・休職制度が整備されていることは職場の心理的安全性にもつながり、人材確保の面でも有利に働く。大島さんはこう強調する。

「人手不足だからこそ、『休めない』をそのまま放置しないことがとても大事です」

(編集部・渡辺豪)

AERA 2023年12月18日号

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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