冨島佑允著『東大・京大生が基礎として学ぶ 世界を変えたすごい数式』(朝日新聞出版)
冨島佑允著『東大・京大生が基礎として学ぶ 世界を変えたすごい数式』(朝日新聞出版)

 数式は、このような法則を発見し伝えるための強力な武器であり、現代の創造的な取り組みは、そのほとんどが高度な数式に支えられています。

 現代の創造性の源泉は“数式”なのです。

 数式読解力によって培われる思考のポイントは、余分なものを切り捨てて本質を浮かび上がらせる「シンプル・イズ・ベスト」にあります。世の中の偉大な発明や発見は、数式というレンズを通して物事の本質を見ることで成し遂げられたものが本当に多いのです。数式は、「本質を見るための虫眼鏡」なのです。

 たとえば、AI、アート、太陽光発電、お金の運用、宇宙のことなど、さまざまな分野にわたって、数式が今まさに世の中に変化を起こしています。もちろん、使われている数式もすべてちがいます。ですが、数式が世の中を変えるプロセスはいつも同じなのです。私はこれを「数式の創造サイクル」(図表参照 ※外部配信先では閲覧できない場合があります。図表をご覧になりたい方は、AERA dot.でご覧ください)と呼んでいます。

【図版】数式の創造サイクル(※冨島佑允著『東大・京大生が基礎として学ぶ 世界を変えたすごい数式』より/朝日新聞メディアプロダクション)
【図版】数式の創造サイクル(※冨島佑允著『東大・京大生が基礎として学ぶ 世界を変えたすごい数式』より/朝日新聞メディアプロダクション)

 世の中には難しい課題や複雑な物事があふれています。そして、その課題を解決しようと努力する人や、複雑な物事を理解しようと学んでいる人たちが、「本質を見る虫眼鏡」である数式を駆使して核心に迫ろうとしているのです。そして、見つけ出した法則性を新たな数式として表し、論文や本などにして世の中に伝えます。

 こうして生み出された数式を知ることで、世界中のだれもが同じ本質をつかむことができるのです。

 数式の力の源は、その極限までの客観性です。言葉は、同じ文章でも文化によって、あるいは人によって捉え方が異なることがあります。

 一方数式は、真の意味での世界共通語です。今まで未解明だったことについて、世界のだれかが解明して数式にすれば、その数式を見るだけで全人類がその物事の本質を理解できるようになります。その影響力は国を超え世界全体に及び、かつ100年後や1000年後の人類にまで及びます。なぜならば、数式は文化や政治制度や法律に全く影響を受けない、極限までの客観性を持つからです。

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