このままなら大流行

 厚生労働省もインフルのワクチンの供給を急いでおり、9月末の時点で、年度内の供給量の半数を上回る約1660万本が出荷される予定だ。抗インフル薬についても「供給不安が生じる恐れはない」と、厚労省の担当者は言う。

 しかし、本格的にインフルワクチンの接種が始まるまでには、もうしばらくかかる。菅谷さんはマスクや手指消毒など、個人でできる対策をとってほしいと訴える。

「インフル予防の対策は新型コロナと同じです。手指消毒を徹底して、マスクをする。屋外ではともかく、屋内では絶対にマスクをすべきです。ところが、電車内でマスクをしていない高齢者を普通に見かける。重症化すれば死亡リスクの高い感染症だということを認識してほしい」

 今シーズンはインフルと新型コロナが同時流行すると、菅谷さんは予測する。

「そうすると医療現場はひっ迫します。解熱剤や咳止めが不足するかもしれません。すでにインフルと新型コロナが同時に検査できるキットについては不足気味で、出荷制限のかかっているメーカーが多いです」

 欧米が「コロナ明け」した昨年末、インフルが各国で大流行した。米国では約3万人が亡くなった。

 東京都は9月21日、インフルの感染者が急速に増加しているとして、「流行注意報」を発表した。9月に注意報が出るのは異例だという。

「インフルの流行が首都圏で本格的に始まり、これから全国に広まっていくでしょう。問題は、インフルに対する国民や政府、マスコミの関心が低いことです。このまま大流行になれば混乱は必至です」

(AERA dot.編集部・米倉昭仁)