(写真はイメージ/GettyImages)

 「キッチンスポンジは雑菌だらけ。あなたのうちのスポンジは大丈夫?」というCMを見ると不安になって、除菌効果のあるキッチン洗剤を買いたくなるのはなぜだろうか? 行動経済学ではこの心理を「反転効果」と呼ぶそうだ。

 マーケティング&ブランディングコンサルタントで昭和女子大学現代ビジネス研究所・研究員の橋本之克(はしもと・ゆきかつ)さんによると、「リスクや危険な状態を訴えると、人は動く」。人は、危険やリスク、損をしている状態だと冷静さを失い、その損を取り戻そうと、一発逆転を狙って行動を起こすそうだ。橋本さんの著書『ミクロ・マクロの前に 今さら聞けない行動経済学の超基本』(朝日新聞出版)から、「キッチンスポンジは雑菌だらけ」のCMが気になる心理の解説を抜粋して紹介する。

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 「キッチンスポンジは雑菌だらけ」と言われると、「自分のうちのスポンジも雑菌だらけかもしれない」という不安な気持ちになる人は多いのではないでしょうか。このCMは、ターゲットとなる消費者に対して、自分が危険な状態にあって、損をしているかのような気分にさせます。これはメーカーが商品を売るときに「反転効果」を活用する典型的な方法です。

 実は身の回りに菌がいる、危険な状態であると知らされると、これに対抗できる除菌剤を、「効果はわからないけれど買ってみよう」と判断するわけです。

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「反転効果」の由来は競馬のギャンブル