新型コロナウイルスのデルタ株=国立感染症研究所提供
新型コロナウイルスのデルタ株=国立感染症研究所提供

 新型コロナウイルスの第5波で猛威を振るい、現在の主流であるオミクロン株よりも重症化しやすいとされる「デルタ株」が、神奈川県で検出されたーー。そんな情報が9日、SNS上に流れ、医師や専門家らの間でも「今後の感染の状況を注視するべき」と懸念の声が広がった。しかし、この情報を公開した研究機関は「間違いだった」と削除。本来はオミクロン株のはずが、なぜかデルタ株に「変異」するシステムエラーが起きていたことが、編集部の取材でわかった。いったい何が起きていたのか。

【写真】デルタ株の情報が掲載されたサイトはこちら

*   *   *

 ことの発端は、世界各地で解析された新型コロナの遺伝情報が集まる国際的なプラットフォーム「GISAID(ジセイド)」。新型コロナ、鳥インフルエンザといったウイルスの情報を世界で共有する枠組みだ。各国で現在、どういった株が流行しているのか確認することができ、多くの研究機関や研究者が利用している。

 このGISAIDに7月9日時点で、神奈川県で4例のデルタ株が検出されたという情報が登録され、それを知ったツイッターの利用者がツイッターに投稿した。

 現在はより感染力が強いオミクロン株に置き換わっているが、デルタ株は30~40代の体力がある世代でも感染すると重症化、死亡するケースが相次ぎ、第5波を引き起こした変異株。「大きく広がらないことを祈る」「油断できない」といった声が続々と上がり始めていた。

 そこで編集部がデルタ株を検出したという川崎市健康安全研究所に取材をしてみると、想定外の答えが返ってきた。

「私どもの研究所でデルタ株が出たことになっていますが、そのような事実はありません」

■なぜかデルタ株に

 川崎市健康安全研究所の担当者は、取材に対し、こう説明した。

「システムエラーが起き、オミクロン株という解析結果が、GISAIDに登録する際になぜかデルタ株という結果に変わってしまっていました」

著者プロフィールを見る
吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

吉崎洋夫の記事一覧はこちら
次のページ
なぜかオミクロン株が