東京都国立市が開いた婚活パーティーのチラシ
東京都国立市が開いた婚活パーティーのチラシ

 そもそも、結婚を望まない人に、行政が何をどうすれば価値観を押し付けられるのでしょうか。あくまで、結婚を願っているけど出会いがなかったり、結婚までたどりつけなかったりした人のお手伝いをしましょう、という事業に過ぎず、それを「押し付け」と評価するのは違うと思います。

ーー批判の声が取りあげられている一方で、「支援してほしい」という声もあるのですか?

岩丸 あります。若い男女がたくさんいる都会の方には想像がつきづらいかもしれませんが、島しょ部や農村部を抱える愛媛県では、若い男性に比べ女性が極端に少ないというような地域が少なくありません。

 利用者だけではなく、たとえば地元企業や労働組合の幹部からも、若い従業員の出会いの場が少ないことに危機感を抱き、支援して欲しいという声が届きます。「価値観の押し付け」ですとか、否定的な声ばかりが取りあげられてしまうと、支援を願う声を出しづらくなってしまうのではないかと危惧しています。

ーー民間の婚活やマッチングアプリの事業者が数多くあるこの時代に、行政が婚活を支援する意義とはなんでしょう。

岩丸 実は、行政の婚活支援や出会いの場の創出は、少子化対策として始まった新しい取り組みではないのです。たとえば「青年団」という、その地域の20~30代の男女を中心に組織された自治団体があるのですが、市町村の青年団が多いです。

 かつてはその市町村の青年団で夏祭りなどさまざまなイベントを開催して、若い男女の出会いの機会を作っていました。行政が若い男女の出会いや婚活を支援し、地域活性化につなげようという取り組みはとっくにやっていたことで、潜在的なニーズが昔からあったのだと思います。時代に合わせて、その形が変わっただけだと考えています。

 また、地域の活性化につなげることもテーマの一つです。イベントで若い人たちを呼び込んで、その地域の良さを知ってもらい、そのイベントや観光地、街の魅力をSNSで発信してもらう。その実際の経済効果がどうなのかという指摘もあるでしょうが、若い世代が出ていき、外からも来てくれないという現実の中で、行政は何もしなくていいのかと。小さな積み重ねであっても努力は必要だと思います。

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自己責任論を押し付けるのは酷