テレビアニメ「鬼滅の刃」柱稽古編のティザービジュアル (C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
テレビアニメ「鬼滅の刃」柱稽古編のティザービジュアル (C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

【※ネタバレ注意】以下の内容には、今後放映予定のアニメ、既刊のコミックスのネタバレが含まれます。

【伊黒に“恋心”を抱いていた女性はこの人】

 アニメ『鬼滅の刃』「刀鍛冶の里編」の最終回後、次は鬼殺隊の実力者「柱」たちが活躍する「柱稽古編」の制作が発表された。過去に「柱」が一堂に会したのは、「柱合裁判」(ちゅうごうさいばん)の場面で、第一印象では、いずれもクセの強い人物ばかりだった。しかし、アニメシリーズで冨岡義勇、胡蝶しのぶ、煉獄杏寿郎ら、「柱」たちが活躍するやいなや、その強さと魅力で視聴者を次々にとりこにした。今回は、ネチネチとした言葉遣いながらも、甘露寺蜜璃の回想で「意外な優しさ」を見せた蛇柱・伊黒小芭内(いぐろ・おばない)の特性について考察する。

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■「ネチネチしている」蛇柱・伊黒小芭内

 鬼殺隊の剣士たちが戦闘に使用する「呼吸」は、その人物の戦闘特性を示しており、性格とも関連していることが多い。なかでも「蛇の呼吸」を使う蛇柱の伊黒小芭内の姿や言動は、「蛇」をストレートに思い起こさせるものだった。

 彼は首元に白蛇・鏑丸(かぶらまる)を巻き付けており、会話中には「ネチネチ」という擬音が添えられていた。古来より、蛇の物語には「猜疑心の強さ」「しつこさ」を連想させる語りが多いが、伊黒のセリフ「信用しない 信用しない」という口癖も、「蛇柱」の名にふさわしいインパクトを与えるものだった。

 鬼の妹を連れている炭治郎を糾弾する「柱合会議」の際には、伊黒は、竈門兄妹をかばった水柱・冨岡義勇にまで容赦ない言葉を浴びせかけていた。

「隊律違反は冨岡も同じだろう どう処分する どう責任を取らせる どんな目に合わせてやろうか」(伊黒小芭内/6巻・第45話「鬼殺隊柱合裁判」)

 命を賭して鬼と戦う鬼殺隊=「正義の味方」というイメージを持っていると、こういった伊黒の言動は異様ですらあった。

■理知的で皮肉屋な伊黒

 しかし、口調こそネチネチしているものの、伊黒の言葉は多くの場面において、冷静で的確である。鬼の禰豆子の処遇を決定する際に、「そもそも鬼は大嫌いだ」と感情的な言葉を伝えてはいるものの、伊黒の主張はこうだった。

「そもそも身内なら庇って当たり前 言うこと全て信用できない 俺は信用しない」(伊黒小芭内/6巻・第45話「鬼殺隊柱合裁判」)

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植朗子

植朗子

伝承文学研究者。神戸大学国際文化学研究推進インスティテュート学術研究員。1977年和歌山県生まれ。神戸大学大学院国際文化学研究科博士課程修了。博士(学術)。著書に『鬼滅夜話』(扶桑社)、『キャラクターたちの運命論』(平凡社新書)、共著に『はじまりが見える世界の神話』(創元社)など。

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