※写真はイメージです(gettyimages)
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 早朝の割安価格でサウナを利用する「朝ウナ」。「朝活」としてビジネスに活用する向きもあるようだが、マナーも大事。最新事情をリポートした。AERA 2023年6月19日号の記事を紹介する。

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 世は空前のサウナブーム。香り、音楽、照明と趣向を凝らしたサウナが続々オープンしている。新型コロナの感染流行も落ち着いたことだし、と数十年ぶりにサウナの門をたたいた。

 料金を調べると、「朝割」がお得なのを知った。早朝は利用者も少なめで人気店でもゆったり過ごせる。サウナ室への人の出入りが少ない分、温度が下がりにくく、ベストな状態がキープされやすいメリットも。愛好家の間では朝のサウナ浴を「朝ウナ」と呼ぶそうだ。さっそく朝ウナに向かった。

■マシンガントーク炸裂

 平日午前8時。一番乗りかと思いきや、先客が数人いた。なんといずれも20~30代。30年前のサウナ室では、ぽっこりおなかのおじさんの合間で縮こまっていた記憶がある。サウナ利用者の若返りが、シニア手前の筆者には新鮮な驚きだった。

 彼らは慣れた様子で黙々と水を浴び、サウナ室に吸い込まれていく。頼もしい。後ろ姿にはベテランの風格が漂う。そんな彼らをロッカー室から見送りながら、筆者も続こうとした瞬間、背後からビジネスっぽい会話が響いた。振り返ると、30代とおぼしき男性2人組。午後3時のオフィスのようなメリハリの利いた声。まだ覚めきっていない脳には刺激が強い。が、まあいい、サウナ室ではゆったりくつろげるのだから、と受け流した。しかしまさか、サウナ室でも彼らのマシンガントークを浴び続けることになるとは……。

 サウナ室に流れるリラックス音楽をかき消し、近況やビジネスプランを熱っぽく語り合う2人。サウナで“朝活”のようだ。知りたくもないのに1人は商社勤務、もう1人はベンチャー経営者だと分かる。商社マンが言った。

「朝活サウナにはまってるんすよ。この前、所属部署のメンバー集めてサウナでブレスト(ブレーンストーミング)したら大好評でした」

 他の客もいたら大迷惑では、と突っ込みたいのをぐっとこらえて先にサウナ室を出た。

 同様の体験をした人は他にもいるようだ。サウナ好きの知人からは「サウナが流行してから、意識高い系のビギナーが来るようになり、中には貸し切り部屋のような感覚で過ごす人もいる。会議をしちゃうのはその典型」との意見も聞いた。

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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