室井佑月
室井佑月

 作家の室井佑月氏は、政治の、そしてリーダーのあるべき姿について語る。

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 春に日銀の総裁が交代する。その際に私が望むのは、アベノミクスの徹底した検証と反省だ。じゃぶじゃぶの金融緩和政策は、私たちになにをもたらしたのか? 経済のゼロ成長、国民の格差拡大による分断、増える困窮者……。

 私は加速しつづける超少子高齢化も関係していると思う。将来に不安があれば子作りに躊躇(ちゅうちょ)するし、経済成長がなく給料が上がる望みがないのなら家庭を持つことも考えられない。生活が安定しない非正規労働も増えた。

 今、この国の現状は失われた30年といわれている。これが40年になるのか、50年になるのか? 過去の栄光が信じられないほどの、後進国となっていく過程となるのか?

 一つだけはっきりいえるのは、ここで失われた30年に終止符を打ちたい、新たな道を模索したいというなら、日本のリーダーである岸田首相が、真摯(しんし)に失敗を認めることからはじめなくてはいけないということだ。

 できるか? だって、失われた30年は自分らの利権しか考えない自民党政権がもたらしたものだ。利権まみれの老獪(ろうかい)な先輩方、死ぬまで自分だけ安泰を信じてやまない先輩議員らを前にして、岸田さんが、

「今までのやり方は間違っていました。申し訳ありませんでした」

 と私たち国民に頭を下げることができるだろうか。この場合、大事なのは、頭を下げることじゃなく、その先につづく言葉だ。

「その上でお話ししたいことがあります」と。

 日銀の異常な金融緩和政策はここまでになると、元に戻すにしてもかなり市場が混乱するという。

 まず、金利上昇は避けられない。そしたらお金を借りている中小企業や、住宅ローンを抱えている人たちには厳しい。インフレと円安が加速すれば、私たちの暮らしはもっと苦しくなる。食料などの自給率が低く、輸入品に頼りきっているから。今でも食料品の値上がりが問題となっているのに。

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室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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