高い技術で日輪刀をつくる刀鍛冶たち。画像は鬼滅の刃「刀鍛冶の里編」の公式YouTubeより
高い技術で日輪刀をつくる刀鍛冶たち。画像は鬼滅の刃「刀鍛冶の里編」の公式YouTubeより

【※ネタバレ注意】以下の内容には、今後放映予定のアニメ、既刊のコミックスのネタバレが含まれます。

【写真】刀鍛冶の里編で「キーマン」となる鬼殺隊のキャラクターはこちら

鬼滅の刃』アニメ新シリーズ「刀鍛冶の里編」の制作が発表されて以降、新情報はまだ解禁されていない(2022年9月30日時点)。このシリーズで新しく参戦する、恋柱・甘露寺蜜璃と霞柱・時透無一郎のティザービュジュアルや新PVの完成度の高さは、ファンの期待を高めている。放映時期、新しい声優メンバー発表が待ち遠しい今だからこそ、「刀鍛冶の里編」の見どころについて、放映前におさらいしておきたい。今回は主人公・竈門炭治郎が刀鍛冶の里で手にする、「新しい日輪刀」の謎について考察する。炭治郎の日輪刀は、刀鍛冶の里で起こる“ある事件”をきっかけに、大きな変化を遂げることになる。

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■「英雄」が使う入手困難な「剣」

 古今東西、物語のヒーロー(英雄)たちは、異能、優れた身体能力、稀有な道具を使って強大な敵と戦う。英雄と「剣」にまつわる伝承は数多くあり、石に刺さっていたアーサー王の名剣エクスカリバー(「アーサー王物語」)、リンゴの大木に突き立てられていたシグルズの名剣グラム(『ヴォルスンガサガ』)など、その由来は象徴的に語られている。『日本書紀』『古事記』に登場する、八俣大蛇(ヤマタノオロチ)の尾から見つかった草薙剣(くさなぎのつるぎ。※天叢雲剣 あめのむらくものつるぎ)もそれにあたる。

 いずれも入手困難であること、他の物体から取り出されること、持ち主が運命的に“選ばれている”ことを想像させる語りであることが特徴だ。

■『鬼滅の刃』の「日輪刀」の神話性

『鬼滅の刃』において、鬼と戦う鬼殺隊の隊士たちは、「日輪刀」と呼ばれる、太陽のパワーを秘めた刀を使用するが、不死に近い肉体を持つ鬼を倒すためには、この日輪刀が必須となる。

「日輪刀は 別名 色変わりの刀とも言ってなぁ 持ち主によって色が変わるのさぁ」(鋼鐵塚蛍/2巻・第9話「おかえり」)

 日輪刀は原材料が「陽光を吸収する鉄」で、それだけでも神話的なエピソードだが、刀の持ち主が「道具」である日輪刀に「色変わり」という影響を与える相互性が興味深い。日輪刀の「色変わり」が、入隊試験を終えた鬼殺の剣士の第一の関門となる。

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植朗子

植朗子

伝承文学研究者。神戸大学国際文化学研究推進インスティテュート学術研究員。1977年和歌山県生まれ。神戸大学大学院国際文化学研究科博士課程修了。博士(学術)。著書に『鬼滅夜話』(扶桑社)、『キャラクターたちの運命論』(平凡社新書)、共著に『はじまりが見える世界の神話』(創元社)など。

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