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ストレスが皮膚疾患に関係していることはよく知られています。では、視覚や音で、かゆみが誘発されることはご存じでしょうか。また、そんな伝搬するかゆみは、ある程度コントロール可能なのだといいます。近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授の大塚篤司医師が、心と関係のあるかゆみについて解説します。

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 ストレスが多いときに皮膚になんらかの症状が出る人は多いのではないでしょうか? にきび、アトピー性皮膚炎の悪化、円形脱毛症など、皮膚疾患とストレスの関係が示唆されている病気はいくつかあります。これには理由があって、人体の発生が関わっています。母親のおなかの中で体ができあがるとき、皮膚と脳は同じ外胚葉(はいよう)を起源とするため密接な関係があるのです。今回は、特に心と関係のあるかゆみについて解説したいと思います。

※写真はイメージです(写真/Getty Images)
※写真はイメージです(写真/Getty Images)

 みなさんは、虫を見たときに体がかゆくなることはありませんか? また、誰かが体をひっかいているときに、自分までかゆくなってしまうことはないでしょうか? このように、視覚や音でかゆみが誘発されることはよく知られています。

 この伝搬するかゆみは、一般の人よりアトピーの人のほうが起きやすいということがわかっています。音による伝搬するかゆみは、事前に情報を伝えるだけで抑えることができます。例えば、ひっかく音を聞くとかゆくなる人は多いのですが、このテストを受ける人に「肌をひっかく音を聞くとかゆくなります」と伝えておくとかゆみを感じる患者さんは減ります。伝搬するかゆみはある程度コントロール可能なのです。

 怒りもかゆみに関係しているようです。原因不明のじんま疹の患者さんは、怒りがかゆみの重症度の予測因子でした。つまり、怒りが強い人ほどじんま疹が悪化する可能性があるということです。一方、乾癬(かんせん)の患者さんはうつとかゆみが関係していたようです。怒りやストレスは、ある特定のホルモンを放出させます。これが、皮膚にある肥満細胞に働きかけヒスタミンなどのかゆみを引き起こす化学物質を放出する可能性があります。そのため、精神的な影響がかゆみを引き起こすと考えられています。(文献)

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大塚篤司

大塚篤司

大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員、2017年京都大学医学部特定准教授を経て2021年より近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授。皮膚科専門医。アレルギー専門医。がん治療認定医。がん・アレルギーのわかりやすい解説をモットーとし、コラムニストとして医師・患者間の橋渡し活動を行っている。Twitterは@otsukaman

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かゆみが強いと、死にたい気持ちに