小島慶子(こじま・けいこ)/タレント、エッセイスト。1972年生まれ。家族のいるオーストラリアと日本との往復の日々。近著に小説『ホライズン』(文藝春秋)。最新刊は『るるらいらい 日豪往復出稼ぎ日記』(講談社)
小島慶子(こじま・けいこ)/タレント、エッセイスト。1972年生まれ。家族のいるオーストラリアと日本との往復の日々。近著に小説『ホライズン』(文藝春秋)。最新刊は『るるらいらい 日豪往復出稼ぎ日記』(講談社)
有権者も「選挙過ぎれば熱さ忘れる」とならないために (c)朝日新聞社
有権者も「選挙過ぎれば熱さ忘れる」とならないために (c)朝日新聞社

 タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

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 選挙が終わりました。これが有権者の出した答えです。ホッとしていますか? 不安になっていますか。この原稿を書いているのは投開票日前で、まだ想像がつきません。

 勝敗がつき、あなたが多数派であることが判明し、あるいは少数派であることがわかって、身近な人との間に温度差を感じることがあるかも。だけど人生は続く。レースも終わったのだし、政治のことは忘れて日常に戻ろう!と多くの人が考えるでしょう。価値観が違う人とも一緒に働いて、同じ空の下で生きていかなくちゃならないのですから。

 当たり前のことですが、政権を握った政治家は、自分を支持した人々だけでなく、支持しなかった人々の暮らしにも責任を負うことになります。選挙中には憎たらしい他党支持者だった人たちも、守るべき国民になる。人々が分断され、誰かが置き去りにされることのないように目配りしながら政治を行わなくてはなりません。自分の支持者だけえこひいきしたり、選挙の時だけにこやかに平身低頭したりして、終わってしまえば知らんぷりでやりたい放題、なんて為政者はごめんです。

 だから、これからが正念場。政権を握ったのがあなたの支持した政党でもそうでなくても、国民全員を満足させることはできません。改憲も消費増税も、どうやったって意見が分かれまくって、SNSも大荒れになるはず。きっとあなたも、それじゃ話が違うよ!とか、私のことは後回しなの?と失望することがあるでしょう。その時に「でも選んだのは自分だから、しょうがない……」「でも自分の意見は少数派だから、しょうがない……」と口を噤(つぐ)んだらおしまいです。

 選挙が終わっても、勝っても負けても、注文をつけ続けなきゃ。日々の暮らしで忙しいし面倒くさいけど、困りごとも願いごともバラバラな私たちが一緒に生きていくには、世の中を誰かに丸々お任せにはできないのです。

AERA 2017年10月30日号

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小島慶子

小島慶子

小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。共著『足をどかしてくれませんか。』が発売中

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