ロシアによるウクライナ侵攻から1年。日本にいるロシア人たちも苦悩の日々を送ってきた。ロシア料理店「ボルガ」シェフで、モスクワ生まれのエブゲニヤ・マカリナさんが胸中を明かした。AERA 2023年2月27日号から。

【写真】プーチン氏の顔写真とともに「間抜けなプーチン」と書かれた火炎瓶

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 富山のロシア料理店のシェフとして働き始めて、約5年になります。モスクワで生まれ育った私ですが、叔母はウクライナ人です。ここ富山にもウクライナ人の友人がいます。そもそも私が生まれたとき、両国はソビエトという同じ国でした。私の頭の中で、ウクライナ人とロシア人の区別はありません。ロシアが戦争を始めたときは、本当に驚きました。「富山人」と「東京人」とで戦争しますか? それと一緒ですよ。なぜこんな馬鹿げた戦争をしなきゃならないのか、まったく理解できません。

 プーチン大統領には、「起きて目を開けて、ロシアの現実を良く見て!」と言いたいです。私が子どもの頃、洗濯機もテレビも、ぜんぶロシア製でした。いまは中国などからの輸入品に取って代わられてしまいました。街も夜になると人通りが少なく、治安も悪いです。戦争などしている場合か、と思います。

 一方で、米国やヨーロッパの国々は新たな戦闘機や戦車をウクライナに投入しようとしています。そんなことをしたら、もっとたくさん人が死んでしまう。その様子を、米国はただ見ているだけ。ほんとにおかしいですよ。日本には絶対にそんな協力をしてほしくありません。

 この戦争については、テレビやYouTubeなどで流される間違った情報に惑わされている人も多いと感じます。もっと「自分の頭で」しっかり考えてほしいといつも思います。

 昨年3月から半年間ほど、お店にも嫌がらせの電話がかかってきた時期がありました。「ロシア人は富山から出ていけ」「いつまで人を殺すんだ」とか。みんな男性でした。オーナーが対応してくれましたが、こちらがじっくり話せば、「私も戦争を望んでないのは同じだ」と落ち着いて話してくれる人もいたようです。私も、お店に直接来てもらえばいくらでも対話する、そんな気持ちでいました。

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