ソチ五輪アイスホッケー女子予選リーグ、対ドイツ戦。白いユニホーム左10番は米山知奈選手。その右17番が平野由佳選手(撮影/永山礼二)
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 平野由佳・2013年6月1日(株)ローソン入社、中村亜実・13年9月21日(株)バンダイ入社、堀珠花14年4月1日トヨタ自動車北海道(株)入社予定……女子アイスホッケー代表選手たちのここ1年の就職状況だ。8人のメンバーが正社員に就職、内定を勝ち取っている。今、就活に駆け回っている学生たちにはうらやましい限りの「勝ち」っぷりである。

 だが、1年前、五輪出場を決めた時には、学生以外はほとんどの選手がアルバイトで生計を立てていた。それが、その後の約半年間で、なぜ、このような劇的な就活ドラマが繰り広げられたのか。

「躍進」のカギは、2010年に日本オリンピック委員会(JOC)がスタートさせた「アスナビ」というプロジェクトにある。国内の経済状況の悪化と共に、企業スポーツも多くが休廃部に追い込まれた。安定した競技生活を続けさせるために、JOCが仲介となって、企業にトップアスリートの就職支援を呼びかける活動だ。このアスナビに、スマイルジャパンの8人も登録していたのだ。

「他社さんの状況を知りたくて出かけた説明会で運命的な出会いをしてしまいました」

 と、笑うのは東京・浜松町の太陽生命保険広報部・田中義久部長。昨春の経済同友会向け「アスナビ」説明会に出かけ、スマイルジャパンのエース久保英恵選手(31)と出会った。当時、リンクでバイトをしていた久保選手が「私は一度、引退しましたが、夢を捨てきれず復帰しました。副将としてチームを引っ張っています」と、力強くあいさつした様子と、説明会後半の懇親会で、田中部長はすっかり久保選手の人柄・根性に惚れ込み、面接を開始。昨年10月、入社の運びとなった。現在、久保選手は広報部で社内報の編集を担当する。

 一方で、厳しい時期を経験した選手もいる。昨夏、ローソンに就職した前主将の平野由佳選手(27)だ。札幌でスポーツクラブやショップでバイトをしながら選手生活を続け、アスナビにも約2年前からエントリーしていた。この間、話があったのは1社で、内定は出なかった。

 状況を変えたのは、五輪出場決定。平野選手自身も、「オリンピック効果は絶大だった」と目を輝かす。採用したローソンのヒューマンリソースステーション人事企画部の担当者は振り返る。

「ウチは、どんどん新しいことに取り組む企業です。アスナビに関しても、チームスポーツの選手と個人競技の選手を1人ずつ採用したかった」

AERA 2014年3月10日号より抜粋