前川喜平さん。本連載では読者からの前川さんへの質問や相談を受け付けています。テーマは自由で年齢、性別などは問いません。気軽にご相談ください。
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デートするカップル(※写真はイメージです) (c)朝日新聞社
デートするカップル(※写真はイメージです) (c)朝日新聞社

 文部科学省で事務次官を務めた前川喜平氏が、読者からの質問に答える連載「“針路”相談室」。今回は、冴えない毎日に思い悩む女性からの相談です。

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Q: いくつになっても、配偶者が居ても、ステキな人とデートしたい! そんな煩悩でいっぱいです! 年齢相応の方法で気晴らししなければと思うものの、目の前は雑用の山だし、時間もお金もないし。さらに手元は見えなくなり、歯科に行けば抜歯やインプラントを勧められるし……。頭を欲望や妄想でいっぱいにしないと、ショボイ現実に立ち往生しそうです。(神奈川県・40代・女性・公務員)

A: その気持ち、分からないでもないですよ。人間は煩悩の塊ですからね。

 あなたはきっと今、仕事がつまらないんでしょうね。「仕事=雑用」という感覚になっちゃっているのでは。確かに、ろくでもない仕事が自分に集中してくると、煩悩が湧いてくるものです。仕事でやりがいが見いだせないと、他で満たしたくなるという構図ですね。

 ただ、そういう欲求を満たしたとしても、本当に幸せな人生にはなりません。40代は、大事な仕事を任される年代ですよね。煩悩を抱えつつも、責任をもって仕事をしなきゃいけない。

 僕も文科省時代、時間のムダではないかと思うような仕事が随分ありました。しょうもない国会議員の相手をさせられたり、国会答弁を毎晩作らされたりね。夜なべで作業して、翌朝は早い時間から大臣に説明しないといけない。嫌な仕事だから、押し付け合いがよく起こるんです。

 ただ、どこかで世の中の幸せにつながっているはずだと信じて仕事をしていました。つまらない仕事でも、多少なりとも工夫して良い仕事をすると、まわりまわって世の中のためになるはずだと。公務員という仕事は、どこかで人の幸せにつながっている仕事だと思う。そうやってプラスに考える努力をしてみては。

 仕事をしている時間が8時間だとすると、1日の3分の1。つまり人生の多くを仕事に費やしています。だから仕事がつまらないと、人生がつまらなくなるとも言える。そう考えると、仕事の時間を豊かなものに変えようとするのはすごく大事なことですよね。

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前川喜平

前川喜平

1955年、奈良県生まれ。東京大学法学部卒業後、79年、文部省(現・文部科学省)入省。文部大臣秘書官、初等中等教育局財務課長、官房長、初等中等教育局長、文部科学審議官を経て2016年、文部科学事務次官。17年、同省の天下り問題の責任をとって退官。現在は、自主夜間中学のスタッフとして活動する傍ら、執筆活動などを行う。

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