蜜月を演出する安部首相と渡辺代表(左)。今回は互いにとって利が大きい取引となった (c)朝日新聞社 @@写禁
蜜月を演出する安部首相と渡辺代表(左)。今回は互いにとって利が大きい取引となった (c)朝日新聞社 @@写禁

 安倍政権下でついに新しい政治体制が生まれた。自民、公明の枠組みに、維新の会、みんなの党の2党が加わった「2013年版連立政権」だ。衆院480議席のうち394議席、実に8割超を占める。その引き金を引いたのは“天下の悪法”特定秘密保護法案だが、さらにこれが憲法改正への道となるのだ。

「修正協議で2党に妥協した部分は、いくら譲ってもいいところ。それより何より大きかったのは、憲法改正に向けて、2党がすり寄ってきて新たな協力体制が確立できたことです。渡辺さんなんか大臣ポストでももらえると思ってるんじゃないですかね(笑)。われわれにとってこの政治体制は、まるで“打ち出の小槌”のようなものですよ」(安倍首相側近)

 当然ながら安倍首相の宿願は憲法改正だ。その前にはまず、集団的自衛権の行使容認への見直し作業が、大きな課題となっている。

 壁となるのが連立のパートナーである公明党だ。山口那津男代表(61)自ら「慎重に」と明言しており、一筋縄ではいかない。その公明党をけん制する意味でも、この2党は大きな存在となるのだ。

 本丸である憲法改正についても同じことが言える。山口代表が「今後3、4年間は政治課題として優先度が低い」としているが、今回の「自公維み」の枠組みをどう使っていくか。「自公連立」だけでなく、安倍首相の手持ちのカードが増えたことになる。

 ある自民党参院幹部は「秘密保護法案のような、ちょっと間違えば世論から大きな反発を食いそうなものは、国会運営を強引に進めたら反発を食う。多くの野党の賛同を得たという形にするためには、この2党は使い勝手がいい。今後も同じだ」と本音を漏らす。

 こうした流れに完全に取り残されたのが民主党だ。当初は来年の通常国会へと継続審議に追い込み、世論の高まりを待つ戦術だったが、自民党の強硬姿勢に完全に当てが外れた。あわてて対案を発表し、与党との修正協議に臨んだが、「時すでに遅し。すでに勝負あっただった」(閣僚経験者)と認める始末。

「反対ばかり主張していたら、野党の中で社民や共産と同じカテゴリーに入れられる。これほど世論が盛り上がらないとは思わず、完全に見誤った」(同前)

 与党が対決法案の成立を期すため、野党を取り込む戦術は昔からある。社会党などの抵抗が激しかった国連平和維持活動(PKO)協力法では、公明、民社両党の協力で1992年に成立させている。手練手管で野党を引き込む政権のリアリズムがそこにはある。

週刊朝日 2013年12月6日号