ダンボッコキッチンでチャーハンを作る風景。フライパン中央にiPhoneがはめ込まれている
ダンボッコキッチンでチャーハンを作る風景。フライパン中央にiPhoneがはめ込まれている
ダンボッコキッチン・ディレクターの深津康幸さん。手には第4回デジタルえほんアワードのグランプリ表彰状
ダンボッコキッチン・ディレクターの深津康幸さん。手には第4回デジタルえほんアワードのグランプリ表彰状

 段ボール製のフライパンに鍋、まな板――。子ども用のごく普通のままごとセットかと思いきや、道具の中央には変わった形の穴が空いている。実はこれ、iPhoneを使ったデジタル遊びのキット。穴はiPhone画面を固定する場所だ。

 遊びの名前は「ダンボッコキッチン」。App Storeで配信中の同名無料アプリ「ダンボッコキッチン」(面白法人カヤック)をダウンロードし、iPhone上で起動させキットに装着すると、さまざまなメニューの調理を疑似体験できる。たとえばフライパンを選んでiPhoneを取り付ければ、画面上に材料が次々現れ、キットごとゆすったり返したりしてハンバーグなどが完成する。本物そっくりの手順、リアルな音がウリだ。

 メニュー数は30種以上。目玉焼きなどの身近な料理からアクアパッツアのような手の込んだ料理もある。シンプルな面白さが子どものみならず大人も魅了し、8月29日には「第4回デジタルえほんアワード」(主催/国際デジタルえほんフェア実行委員会)でグランプリに輝いた。世界中から子ども向けデジタルコンテンツ「デジタルえほん」が集まるアワードだ。

 「26カ国・約200作品の公募があった中で一番になれたのは、率直にうれしかった」と語るのは、本作ディレクターを務めた面白法人カヤックの深津康幸さん。華々しい受賞作、さぞや最新技術がふんだんに盛り込まれているだろうと想像するも、特にそうではないという。

 「iPhoneやスマホにもともと備わる一般的な機能ばかりを利用しているので、技術的にはさほど目新しくないんです。でも、通常なら別の用途に使われるそれらの機能を、遊びの動作とつなげた点では、発想の転換がありましたね。たとえば、周囲の明るさを感知して画面の明暗調節をする『環境光センサ』を、このアプリでは、鍋のふたを閉めて暗くすると画面に湯気が立つ演出に用いています」。

 他にも、傾きとその速さを割り出す『ジャイロセンサ』を、フライパンを振る動きに連動させ、具材が踊る様子をありありと再現した。アイデアがまずあり、そこに既存の機能をあてがって、誰にでもわかりやすく無駄のない遊び空間を作り出している。

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