世界を少しでも変える。じゃないと生きる手応えがないお笑い芸人・IT企業役員 厚切りジェイソンさん(30)今春には、米国の教育用プログラミング言語Scratchの楽しみ方を伝えるNHK・Eテレの番組「Why!?プログラミング」に出演した(撮影/写真部・岸本絢)
世界を少しでも変える。じゃないと生きる手応えがない
お笑い芸人・IT企業役員 厚切りジェイソンさん(30)

今春には、米国の教育用プログラミング言語Scratchの楽しみ方を伝えるNHK・Eテレの番組「Why!?プログラミング」に出演した(撮影/写真部・岸本絢)

 スマホが爆発的に普及し、誰もがアプリを開発する時代。エンジニアではないビジネスパーソンが、プログラミングを学び始めた。ビジネスのどんな現場で、どのような問題解決に役立つのか。

 地図上にある吹き出しをクリックすると、その中に飲食店の情報が現れた。定食屋にイタリアン、フレンチ、中華。ある店は個室があってビジネスランチにも使える。別の店は仲間とワイワイ楽しみたいときにお薦めとわかる。

「社内向けに、会社周辺のランチマップをつくったんです。同僚や先輩から『すごい』『こうしたらもっと使いやすい』と、いろいろ声をかけてもらった。みんなに使ってもらえたことがうれしい」

 伊谷亮太朗さん(28)は、東京都内の人材紹介会社でウェブマーケティングを担当している。顧客企業のウェブページを分析し、検索結果を上位に表示するためのアドバイスなどを担うが、もともとプログラミングを学んだことはなかった。

 ただ、以前からウェブの技術に関心があり、自分の手でモノやサービスを生み出すことにも憧れていた。4年前、勤務時間の一部を担当業務以外に使える社内制度に手を挙げ、社内向けウェブサービスづくりにチャレンジするようになった。

 HTML、CSS、PHP、VBA。いまでは複数のプログラミング言語をひと通り使いこなす。習得は、ネット上で公開されている教材を参考にして、それぞれの言語の考え方を頭に入れた。次にどんどんプログラムを書いてみて、うまくいかなければ、その都度ネットでレファレンス情報を探して試行錯誤を繰り返した。

●複雑な問題は分解すればうまくいく

「プログラミングができるようになって、仕事の幅が広がった」

 伊谷さんはそう実感する。伊谷さんにとってのランチマップは、最初のステップだった。現在、転職を希望する医療関係者向けの自社サイトづくりを担当している。これまではサイトに新しいサービスを加えようとしても「こういうことがしたい」と企画書や仕様書に理想の「絵」を描いて、開発者に依頼するだけだった。

「そのため、僕の考えとズレが生まれることがあった。いまはこの『絵』を描くために『プログラムをこう書いてくれ』と言える。開発のプロセスや難易度も把握したうえで、エンジニアとコミュニケーションできている。企画と技術がわかる僕のところに、他の担当者からアドバイスを求められる機会も増えました」

 プログラミング言語は、コンピューターを操るための言葉だ。ITがビジネスやコミュニケーションに欠かせないツールとして広がると、プログラミングも一部のエンジニアにとっての専門知識から、多くのビジネスパーソンや研究者、学生、子どもたちまでもが学ぶべきスキルになった。

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