レストラン検索をして「今日はビールでもいかがですか?」というセリフとともにジョッキをあげるような動きをするロボホン
レストラン検索をして「今日はビールでもいかがですか?」というセリフとともにジョッキをあげるような動きをするロボホン
スマートフォンとしても利用できるロボット「ロボホン」
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スマートフォンとしても利用できるロボット「ロボホン」
ロボホンはユーザーとの自然な言葉による対話、天気予報や占いといった身近な情報の提供、顔認識による個人の特定、アプリケーションによる機能追加といった能力を備える
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ロボホンはユーザーとの自然な言葉による対話、天気予報や占いといった身近な情報の提供、顔認識による個人の特定、アプリケーションによる機能追加といった能力を備える
プロジェクターを内蔵して、地図や写真、動画を表示することもできる
プロジェクターを内蔵して、地図や写真、動画を表示することもできる
背面には液晶ディスプレイを搭載する
背面には液晶ディスプレイを搭載する

 買収に揺れたシャープが、「モバイル型ロボット電話 RoBoHoN(ロボホン)」という新しいジャンルの製品を発売する。昨年10月に公開され、欧米の展示会でも注目を集めた製品だが、鴻海精密工業の元で、今後のどのような事業展開となるかが注目される製品だ。

 ロボホンは、19.5cmという小型の二足歩行ロボットだが、その名の通り電話機能も備えており、ユーザーと対話しながら家庭内の家電の中心となることを狙った製品だ。人工知能を備え、自然な言葉で話しかけるだけで、電話帳を検索して電話をかけたり、写真を撮ったり、内蔵プロジェクターで動画を再生したりといったことができる。

 13個のサーボモーターによって手足の関節が滑らかに動き、座る、立つ、踊るといった動作ができ、メールを読み上げる際には、手足を動かしてまるでボディーランゲージをしているように動く。こうした人間的な動きに加え、顔認識機能によりユーザーを判別しやり取りを重ねることで、会話の内容が豊かになる。ロボットが成長することで愛着を持ってもらうことを狙っている。

 価格は税抜で19万8000円。月額980円の「ココロプラン」への加入も必須で、無線LAN経由でも使えるが、携帯回線も利用できる。その場合、自分で回線を用意するか、シャープが提供する通信回線を利用することも可能。通信料金は月額650円~となっている。予約は14日から開始し、発売は5月26日から。

 外観はロボットで音声による操作を前提としているが、一般的なスマートフォンと同じAndroidをOSに採用しており、アプリの開発も可能。通常のスマートフォンアプリは動作しないが、専用のアプリを開発して機能拡張ができるため、今後さらなる機能拡張も期待できる。

 ロボットタイプの製品では、ソニーのAIBOが生産終了し、保守部品もなくなったため、既存ユーザーが修理できなくなるという問題も発生している。シャープでは長期間、生産を続けることで、同様の問題が起きないようにしたい考えで、事業を拡大することで長期にわたるサービスを提供していく意向だ。

 そこで問題となるのが、シャープを買収した鴻海の意向だ。ロボホンの開発自体は鴻海の買収以前に始まっていた。買収にあたって鴻海側からは、ロボット事業について「しっかりやりなさいと言われた」とシャープ代表取締役兼専務執行役員でコンシューマーエレクトロニクスカンパニー社長の長谷川祥典氏は話す。

 ロボホンは月産5000台を想定しているが、価格的にも爆発的なヒットは難しいだろう。月額課金が発生するため、継続した利用が前提の収益モデルとなっている。

 長谷川氏は、「いろんなアイテムがあって、なかなか(鴻海に)きっちり説明する時間が取れていない」と認めており、鴻海がロボホンの収益性を疑問視した場合に、事業継続が難しくなる可能性もある。これに対して長谷川氏は「鴻海はシャープが利益を出し、企業価値が最大になるように手助けしてくれる。これまでのシャープのいい文化は残していける」という認識を示し、ロボット事業は継続できるとの考えだ。

 マーケットを広げるためには海外での展開も重要な課題だ。米国や欧州のイベントで展示したロボホンは、来場者の注目を集めており、一定の需要が期待できる。グローバルの展開では、むしろ鴻海と連携できる点で有利になる可能性もある。長谷川氏によれば、シャープと鴻海の連携に関する議論の中で、ロボホンはまだ俎上(そじょう)に載っておらず、どのような連携ができるかは未知数だという。鴻海はEMS(電子機器受託製造サービス)の世界最大手であり、ロボット製造ではソフトバンクのPepperの生産で実績もある。世界規模での事業展開によって、ロボホンの早期の収益化もありえる。

 シャープでは、ロボホンを家庭内における新たな家電連携の中心にしたい考えだ。だが、そのためには「ハードウエアを売りっぱなしにする」のではなく、これまで日本企業があまり得意ではなかったサービスやアプリケーションを継続して提供する根気強い取り組みが必要となる。かわいい見た目ながら、ロボホンはシャープ復活に向けた試金石となりえる事業といえるだろう。(フリーランスライター 小山安博)