アップルウオッチ
アップルウオッチ

 2015年4月24日、おそらく全国の「Apple Store」には行列ができているだろう。Apple Watch(アップルウオッチ)を買い求める人が、何日も前から……。そんなに熱狂的なファンではないが、なんとなくニュースで知っているという人は、「アップルウオッチとはどんなものか?」と聞かれたら、返答に困るのではないだろうか。一言で言えば、アップルウオッチは「腕時計型のスマホ」ではない。スマホを進化させる、新しいウェアラブルデバイスなのである。

 スマホの普及で社会的問題となっているのが「歩きスマホ」だ。歩いている人同士がぶつかりあう、自転車やバイクと接触する、知らずに信号無視をしてしまう。さらに、国土交通省の報告によると、「歩きスマホ」が原因とみられる駅のプラットホームからの転落事故が多発している。海外では、「歩きスマホ」する日本人を、「スマホゾンビ(Smartphone-Zombie)」と揶揄しているようだ。

 そこまでして、スマホから情報を得なければならないのだろうか? 確かに、スマホから得られる情報には、瞬時に確認したいものもある。電話がかかってきたときも、急いで出た方がいい場合と、掛け直してもさし支えがなさそうな場合とがある。その際、発信者を確認できれば、こと足りるはずだ。

 しかし、現状は、「発信者を知る」ために、わざわざスマホを手に取らなければならない。そこまですれば、電話に出るのに大した動作は必要ない。よって、歩きながら電話に出てしまう。次の予定を確認するといった場合でも、バッグからスマホを取り出すという余計なアクションをなくすことができるのが、「グランス」という機能だ。これこそが、アップルウオッチの神髄である。「グランス」は写真、天気予報、カレンダー、地図といった頻繁に見る情報を、“チラッ”と確認できるようにまとめたもので、文字盤をスワイプすると現れる。

 デザインをみると、アップルウオッチがスマホの小型化ではなく、腕時計の進化形であることがわかるだろう。「デジタルクラウン」と呼ばれる側面のダイヤルは、画面の拡大縮小や機能の切り替えなどに使われるが、その形態は腕時計の龍頭(りゅうず)に酷似している。アップルウオッチは腕時計なのだ。だが、スマホとの連動で、いわば“超”腕時計になっているというわけだ。

 「スマホがあるから、アップルウオッチはいらない」、あるいは「アップルウオッチがあればもうスマホはいらない」と言う人がいるかもしれない。それは間違いだ。スマホとアップルウオッチの両方があるからこそ、情報の受け取り方を段階的にできるメリットが生まれる。情報に溺れるのではなく、「必要な情報を、必要なときに、必要な人へ」というコミュニケーションの基本を実現させてくれるのだ。

 この記事はチラ見ではなく、パソコンかスマホでしっかりと読んでいただきたい。

(ライター・里田実彦)