あなたのスマート家電が狙われている!?(※イメージ写真)
あなたのスマート家電が狙われている!?(※イメージ写真)
家庭内でネットにつながるデバイスがいくつあるか知っていますか?
家庭内でネットにつながるデバイスがいくつあるか知っていますか?

 家電業界の昨今のキーワードが「スマート家電」だ。これらを「IoE製品」とも呼ぶが、IoEとは「モノのインターネット(Internet of Everything)」のこと。あらゆるものがネットでつながることを指すのだが、スマート家電はその代表格と言える。

 特にスマートフォンの普及で、スマホで留守録を設定して、スマホから電子レンジにレシピを送信することが可能になる。古くは電話回線を使って留守録予約できるといった家電もあったが、普及はしなかった。だが、スマホの登場で、できることも飛躍的に増大したのだ。

 トレンドマイクロの高橋昌也・シニアスペシャリストによると、「便利になると同じようにリスクも増えるもの」だと言う。

「スマート家電の場合、情報漏えいのリスクも怖いですし、外から勝手に家電を操って火事を起こすといったことも可能です。しかし、それ以上に怖いのは、サイバー犯罪に利用されてしまうことです。被害者ではなく、加害者になってしまう危険性があります」

 どういうことだろうか。米国では2013年末から2014年初めにかけて、10万台以上のスマート家電から企業や個人宛てのスパムメールが75万通以上も送信された事件があったという。スマート家電が乗っ取られてサイバー犯罪に利用されたのだ。

 その背景には、家電という機械のイメージが影響している。パソコンやスマホは定期的に設定を見直したり、アプリを入れかえたり、“メンテナンス”をしている人がほとんどだろう。

 しかし、家電は違う。購入して“使える状態”になったら、それ以降、メンテナンスをする人は少ない。スマート家電ならば必ずパスワードがあるのだが、自分のスマホと通信できるように設定したら、それ以上のことはしない。初期設定のパスワードのままというケースも少なくないのだ。

「パスワードは必ず初期設定のものから変更する。できれば定期的にパスワードの変更をした方がいい。また、定期的にソフトウエアのアップデートをする。そして、最初にアクセス権限の設定を確認して、アクセス許可する端末を制限しておくなど、きちんとメンテナンスしなければならないのです」

 いまやテレビでWEBサイトが見られ、ネットショッピングもできる時代だが、そこにも落とし穴がある。パソコンやスマホならば、「これはフィッシングサイトではないか?」といった注意が働くが、家電で見ているゆえに警戒心が薄れている可能性があるのだ。またパソコンにセキュリティーソフトを入れている人は多いが、テレビにこうしたソフトを入れている人は少ない。

「数多くのスマート家電すべてにセキュリティーソフトを入れることは現実的ではありません。そこで考えるべきなのは、『どのようにネットワークがつながっているか』です。家庭内ならば、必ずルーターを通してインターネットに接続しているはず。そのルーターを強化するのです」

 最近は無線LANルーターが主流だ。この電波は結構遠くまで飛んでいる。無線LANルーターのパスワードの設定やアクセス権限をきちんと確認しないと、勝手に接続されてサイバー犯罪に利用されてしまうこともあるのだ。

「わかりやすいチェックの仕方としては、飛んでいる電波の種類を確認すること。スマホの設定で無線LANの電波を確認すれば、電波の種類がわかります。これがWPAやWPA2ならば、セキュリティーの高い電波です。しかし、WEPだと古い形式の暗号化をしているのでリスクが高い。一番手軽な対策は、無線LANルーターを最新の製品に買いかえること。無線LANルーターは、なかなか壊れる機械ではないので買いかえることが少ないのですが、最新製品に変えるだけでセキュリティーリスクはグンと下がります」

 また、最近は携帯ゲーム機を始めて、家庭内で使われるIT機器が増えている。携帯ゲーム機も無線LAN経由でネット接続しているのだ。その事を意識してセキュリティー対策を取っている家庭はどれだけあるのだろうか。

 最新のスマート家電を買うのならば、無線LANルーターも最新のものに買い替えるくらいの意識が必要なのかもしれない。IT化で便利な世の中になるのだが、一方でリスクも増える。その事をきちんと意識して対策を取らなければならない。

(ライター・里田実彦)