不動産売買の際、土砂災害や津波の災害警戒区域は、重要事項として不動産業者は契約前に購入・入居希望者に説明することが義務づけられているが、洪水の浸水想定はハザードマップの作成が自治体側で追いついていないなどの理由から対象外だった。これに対し国交省は1月、不動産業者に対しハザードマップの浸水想定区域を「重要事項」として説明するよう義務づける方針を固めた。導入時期は未定だが、義務化されれば重要事項説明で自治体のハザードマップの提示や水害リスクの説明等が行われることになる。

注意すべき「旧河道」

 それでは今、注意すべき場所はどこか。秦准教授は次の2カ所を挙げる。

「まず、河川と河川とが合流する地点。特に大河川と中小河川の合流付近です。こうした場所は大雨で水位が上がると支流の中小河川の水が本流の大河川に流れこめなくなる『バックウォーター現象』が起き、河川が氾濫する傾向が高くなります」

 昨年10月の巨大な台風19号で氾濫した多摩川や、一昨年7月の西日本豪雨での岡山県倉敷市真備町の高梁川などでバックウォーター現象が起き、被害が出た。

 次に、注意すべき場所として「旧河道(きゅうかどう)」と呼ばれる昔の川筋も重要と警鐘を鳴らす。

「川と言えば、堤防と堤防に挟まれた場所と認識していると思いますが、旧河道も川と同じと考えた方がいい。旧河道は泥土が堆積していて周囲の土地よりも低い帯状の地形で湿地になっていることが多く、いったん大雨が降れば水害の危険はどうしても高くなります」

 台風19号でマンションが浸水した武蔵小杉駅(川崎市)一帯も、多摩川の旧河道だった。旧河道だった場所は、国土地理院がホームページで公開している古地図などで確認できる。

 信州大学震動調査グループの一員で同大理学部の津金(つがね)達郎研究支援推進員は、地震で揺れやすい地域は洪水の常襲地帯と一致すると指摘する。どういうことか。

「地面の揺れやすさはその土地を構成している地盤によって変化します。具体的には、軟らかい砂や粘土などが厚くたまっていると地震が起きれば地震波が増幅されるので揺れやすくなります。また、川が氾濫して水が引くと泥が残りますが、洪水の常襲地域はこのような泥が何度も繰り返し堆積していく場所なので、とても地盤が悪く地震の際には揺れやすい地域となるわけです」

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