日本コカ・コーラ 東京2020年オリンピックホスピタリティ 薄井シンシアさん(59)/フィリピンの華僑の家に生まれ、国費留学生として来日。会社勤めを経て、30歳で出産して専業主婦に。著書に『専業主婦が就職するまでにやっておくべき8つのこと』(KADOKAWA) (撮影/写真部・片山菜緒子)
日本コカ・コーラ 東京2020年オリンピックホスピタリティ 
薄井シンシアさん(59)/フィリピンの華僑の家に生まれ、国費留学生として来日。会社勤めを経て、30歳で出産して専業主婦に。著書に『専業主婦が就職するまでにやっておくべき8つのこと』(KADOKAWA) (撮影/写真部・片山菜緒子)

 特に女性は、年齢を重ねることがネガティブに見られる日本。でも、そんな枠にはとらわれない女性がいる。さまざまな経験をプラスに、キャリアアップを重ねている。

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ANAインターコンチネンタルホテル東京の営業開発副総支配人、シャングリ・ラ ホテル東京のディレクターを経て、薄井シンシアさん(59)は今年1月、日本コカ・コーラの2020年東京五輪のホスピタリティ責任者に就いた。なぜ、キャリアを重ねられたのか。その秘訣を尋ねると、こう答えた。

「私はいま日本コカ・コーラでオリンピックを担当していますが、いま一番やってみたいのは自動販売機に飲料を補充する仕事。担当領域だけでなく、会社の全てがわかりたいのです。どういう商品が売れているのか。何をどこに置いているのかが手にとるようにわかるでしょう」

 好奇心がキャリアの原動力になってきた。現職に就いて4カ月。これまでオリンピック関連の仕事も飲料メーカー勤務の経験もない。猛勉強中だ。しかし「成長のない仕事には魅力を感じない」という薄井さんにとって、学びはやりがいだ。

 だが、7年前は「年齢の壁」を前に悪戦苦闘していた。52歳のとき、子育てを終え、17年間の専業主婦生活から仕事へシフトしようと求人を見つけては応募するが、年齢と仕事のブランクがネックとなって次々とはねられた。やっと手に入れられたのは会員制クラブの電話受付のパートだった。

「人のやりたがらないことをする」

 これは、専業主婦時代からの薄井さんのモットーだ。誰もやらないPTAの役員を引き受けたように、パートでも電話受付の枠を超え他のメンバーがやりたがらないイベントの仕事を積極的に行った。最終的にイベントの売り上げの多くを彼女が稼ぎ出すまでになった。

 その手腕や、47歳のとき外交官の夫の赴任で過ごしたタイで、子どもが通ったインターナショナルスクールのカフェテリアを再建した実績を買われたことが、その後ホテル業界に転職するきっかけとなった。

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