コインチェックは国会でも批判された。麻生太郎金融担当相は1月29日に「常識に欠けておるかな」と発言。金融庁の怒りも伝わってきそうだ (c)朝日新聞社
コインチェックは国会でも批判された。麻生太郎金融担当相は1月29日に「常識に欠けておるかな」と発言。金融庁の怒りも伝わってきそうだ (c)朝日新聞社
登録済みの仮想通貨交換業者(AERA 2018年2月12日号より
登録済みの仮想通貨交換業者(AERA 2018年2月12日号より

 仮想通貨を監督する金融庁は、今回の事件で悩みを抱えてしまった。育成に軸足を置いていたが、規制強化の声を無視できなくなったからだ。

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「これでフィンテックの育成と規制強化のバランスが一層難しくなった。あまりに稚拙な事件で、正直困惑している」

 金融庁関係者がこう指摘するのは1月26日に仮想通貨取引所大手「コインチェック」で発生したハッキング事件だ。仮想通貨はITを使った金融サービス、フィンテックのなかで大きな存在感がある。コインチェックでは、わずか19分間で、利用者から預かっていた巨額の仮想通貨「NEM(ネム)」が不正に引き出されていた。

 事態を重く見た金融庁は事件当日に原因究明などの報告をコインチェックに求めた。翌々日には同社の幹部を呼んで説明させたが、「すべてが不十分」と判断。「再発防止策や発生原因などさまざまな点で分析が足りない。不十分なシステムが常態化している」として、事件発生から3日後、異例の早さで同社に対し業務改善命令を出した。

 さらにその4日後には、命令に基づく報告を待たずに立ち入り検査に着手。登録済みの仮想通貨交換業者16社と「みなし業者」15社、つまりコインチェック以外の全社にシステムリスク管理態勢の自己点検について報告を求めた。立ち入り検査も検討している。

 仮想通貨の法規制では昨年4月に改正資金決済法を施行。金融庁は「世界に先駆けて仮想通貨取引所に登録制を導入した」と胸を張った。それだけに、事件から受けるショックは大きい。

「今後、国会で管理の不備を問われかねない」

と、身構える関係者もいる。

 昨年8月には庁内に「仮想通貨モニタリングチーム」を設置し、仮想通貨交換業者の登録審査・モニタリングや仮想通貨市場の実態把握に乗り出していた。翌月末を締め切りに、登録に向けての事前審査が行われ、先の16社が登録された。

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