天下り問題にゆれる文部科学省。他省庁への広がりは? (c)朝日新聞社
天下り問題にゆれる文部科学省。他省庁への広がりは? (c)朝日新聞社

 文部科学省の補助金が、天下り受け入れ大学に42億円交付されることになっていた。はねのけた大学にはゼロ。

 文部科学省の事務次官が国家公務員法違反の天下りあっせんをしていたとして辞職した。

「国立大学の理事、事務局長は文科省の天下りで占められている」

 そう語るのは国立大学の職員。ある文部官僚の天下りの軌跡をたどろう。

 磯田文雄氏は東京大学法学部卒業後、1977年に文部省(当時)入省、在職中にスタンフォード大大学院に留学したエリートだ。文科省の研究振興局長、高等教育局長などを経て2012年に東大理事に出向した。

●茨大が拒否、名大が拾う

 13年9月末付で別の文科省OBにこのポストを譲り、いったん文科省に戻って大臣官房付に。14年3月で退職、同年5月に茨城大学の学長選挙に応募した。大学側では「文科省からの天下りの押し付け」ととらえた教職員が反発、副学長を対抗候補に立て、6月の選挙で磯田氏は落選する。次に磯田氏を迎えたのは名古屋大学だった。

 同年4月、文科省は「スーパーグローバル大学創成支援プログラム」を公募し、名大も茨城大学も応募していた。名大はアジア7カ国にサテライトキャンパスを設置し留学生を増やす案で応募した。ベトナム、モンゴル、カンボジア、ウズベキスタン、ラオス、フィリピンなどにつくるという。審査結果の発表は9月なのに、奇妙なことに、名大はこれらを統括する「アジアサテライトキャンパス学院」を8月に開設し、初代学院長に磯田氏が納まった。

 名大学長であった浜口道成氏(当時)が退任あいさつで経緯を明かしていた。

「文科省に(プログラムを)『やっていいか』と持ち掛けると二つ返事で『オッケー』と(言われた)」

 9月、この事業で名古屋大学には最大で年間5億円、10年間で42億円の補助金が交付されることが公式発表された。104校が応募し、37校が採択された中、茨城大学は落選した。

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