2015年9月に中国・北京で行われた軍事パレードでは、米国本土を攻撃できるという大陸間弾道ミサイルも披露した (c)朝日新聞社
2015年9月に中国・北京で行われた軍事パレードでは、米国本土を攻撃できるという大陸間弾道ミサイルも披露した (c)朝日新聞社

 中国、トランプ、北朝鮮、日本を取り巻く環境がきな臭くなっている。専守防衛に徹し、海外に展開できる装備は持たない自衛隊。安保法とトランプ大統領の誕生で、どう変わろうとしているのか。AERA 12月12日号では「自衛隊 コストと実力」を大特集。最新兵器から出世レース、ミリメシまでいまの自衛隊に密着している。

 軍事力増強を進める中国、「在日米軍撤退」「日本核武装」発言のトランプ次期大統領。防衛省・自衛隊がピリピリしている理由(わけ)を追った。

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 2017年3月×日──。

 沖縄本島の西約410キロに位置する尖閣諸島。300隻を超える中国漁船が魚釣島を目指して、押し寄せた。海上保安庁の巡視船が上陸を阻止しようと動くが、接続水域に集まっていた中国海警局の公船が邪魔して、接近を許さない。その隙をつき、中国漁民数人が島に上陸。中国国旗が立てられた。島に横付けした巡視船から海上保安官が不法上陸者の検挙に向かったが漁民に扮した中国民兵が発砲。防衛大臣は海上警備行動を発令し、海上自衛隊の護衛艦が海保の救援に向かった。その行く手に中国海軍の艦艇も集まり、にらみ合いが続いた。その後も中国漁民が続々と上陸し、住居などを設営するための資材を運び込み始める──。

 日中衝突でささやかれる最悪のシナリオ。その伏線となる神経戦はすでに始まっている。海上保安庁の巡視船と、中国海警局の公船が洋上で互いを牽制する。元外務官僚で外交政策研究所代表の宮家邦彦さんは言う。

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