15年12月、真由子さんは同じ問題意識を持つ公立校の教師たちと「部活問題対策プロジェクト」を立ち上げ、「教師に部活の顧問をする・しないの選択権を」のネット署名を展開した。3カ月弱で2万3千人を超える署名が集まり、今年3月、文部科学省に提出。8月5日、追加署名を届けた。

 真由子さんは昨年度から部活の顧問を拒否しているが、校務や教材研究などで忙しさは変わらないという。

「部活を優先し授業準備をしない教師の授業は、生徒たちの興味を引き出せず、学びから離れさせてしまう。月曜の朝は生徒たちが最も疲れている。授業中、居眠りする生徒は、授業についていけず、部活に加えて塾通いもするようになり、より多忙になるという悪循環に陥っている。部活の価値は否定しませんが、見直しは必要です」(同)

 文科省は17年度に部活の実態調査を実施し、休養日などのガイドラインを策定する方針だ。今年7月には、休日の部活動手当を4時間以上の従事に対して現行の3千円から来年度は3600円に引き上げる方針も打ち出した。

 しかし、ネット上では失望と怒りの声がわいた。休日の部活は丸一日拘束されるケースが多々あり、その対価としての金額の少なさもさることながら、問題の解決にはならないからだ。

●娘と会うのは寝顔だけ

 部活問題解決のもう一つの柱とされているのが、外部指導者の活用だ。ただ、外部指導者に委ねられる範囲は自治体によってまちまち。山形県の40代の公立中学教師は言う。

「顧問をしている運動部に外部コーチは来ていますが、けがなどがあった場合の責任の所在は学校にあるため、休日の部活からは解放されません。外部コーチに対する支払いも薄謝のため、継続性は保証されない。部活は学校から完全に切り離し、社会教育や地域に移管すべき。部活指導をしたい教師は、社会教育の枠の中ですればいい」

 部活問題に詳しい名古屋大学大学院の内田良准教授(教育社会学)はこう提言する。

「学校から部活動を切り離すかどうか以前に、まずは肥大化した部活を縮小することが先決。部活をスポーツや文化活動の機会保障ととらえるなら連日の練習は必要なく、縮小したうえで教員や外部指導者、社会教育関係者が分担する体制をつくることが大事です」

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