「同じ『無策』でも、中国との関係改善を図るような行動をとった結果として『何もできなかった』ということではない。意図的に改善を図ることをしてこなかったということだと思います」

 安倍政権にとって中国との関係改善は、日本側の望む方向でない限り、イニシアチブをとって図る必要はない、との姿勢だと見る。その理由を我部教授はこう分析する。

「中国との関係改善は安倍政権を不安定化させ、利益にはならないから、やらないというスタンスを維持し続けているのです。反中国感情の高まりこそ、自らの政権基盤の強化につながるのですから」

●中国への無策は米重視と表裏一体

 安倍政権の対米傾倒と対中無策は表裏一体だ、と判断しているのだ。

 対中政策では「米国の関与」に限界がある。だから、国内世論の理解を得ながら日本の軍備強化を図るため、安倍政権は「中国の脅威」や「安全保障環境の変化」といったワードを反復して唱えている、というのはうがった見方が過ぎるだろうか。

 そんな安倍政権の思惑を、米国はどう見ているのか。

 我部教授は「米国の利益に日本がどれほど貢献できるかが、安倍政権に対する米国側の評価基準」とみている。

 安保関連法制は日本にとっては重大事だが、米国にとっては「ないよりはあるほうがよい」といった程度に過ぎない。

 では、何が重要な「貢献」と見なされるのか。

 我部教授は、

「日本の軍事的貢献の中核は基地提供です」

 と強調する。

 在日米軍専用施設の74%が集中する沖縄の犠牲の上に対米関係は成立している。安倍政権が、日米同盟強化の先に「自主路線」や「対等な日米関係」を目指すのであれば、在日米軍基地の縮小を安保関連法制の制定と同時に追求すべきだろう。

 にもかかわらず、沖縄県民の民意を無視して辺野古への新基地建設を強行しようとする安倍政権の姿勢は、矛盾してはいないだろうか。

●揺れる米国に合わせようと腐心

 外相や自民党総裁を歴任した河野洋平氏の見方はこうだ。

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