●保護者含めて会議

 こうした「2次障害」を防ぐために、辻井正次・中京大学現代社会学部教授は指摘する。

「低学年のうちから、子どもができる経験を一つずつ積み上げられる環境づくりが欠かせない」

「うちの子流~発達障害と生きる」というブログで発達障害にまつわる情報を発信しているnanaioさん(48)には、それぞれ異なるタイプの発達障害と診断された長女(小5)と長男(小3)がいる。長女は通常学級に、長男は支援学級に在籍。通常学級に通う長女のことは、親と担任の先生、特別支援コーディネーターの3者が学校で定期的に集まり、「ケース会議」を開いて対応策を話し合っている。「ケース会議」は保護者抜きで行うことも多いが、nanaioさんはあえて保護者も含めてもらった。

●褒めの見える化で改善

 長女は漢字一つを書くのにも、人一倍時間がかかった。字は汚く、繰り返す作業が苦手。学校では、きれいに書くことを義務に感じないよう、きれいに書けたときに星マークをつけてためていく、「褒め」の見える化方式を導入してもらった。先生の提案もあり、長女だけ特別扱いにならないよう、星マークをためる方式を、クラス全員にも導入することになった。

 長女は叱られ続けた頃とは打って変わり、「今日は星印を◯個もらえた」と報告してくるように。小3から続けてもらい、最近では文字がきれいになった。

 神奈川県茅ケ崎市で学習障害の支援活動「ことばと読み書き すーふ」を実践する言語聴覚士の沖村可奈子さんは言う。

「ひとりの子に特別な対応をしてもらう際、クラスでその子が孤立しないようにする配慮が必要。その子の段差を小さくすることが、クラスみんなにとってもいいことにつながるよう、先生がコーディネート力を発揮してくれるとうまくいきます」

 発達障害・グレーゾーンの3人の子どもを育ててきた大場美鈴さん(41)は、自身の経験から、「学校との交渉は、粘り強く」とアドバイスする。

 小5の長男は、発達障害の一つの「自閉症スペクトラム」の診断と、ADHD、LDの傾向があり、漢字の書き取りや板書をノートに写すことが苦手だ。小4の頃から学習の内容が複雑になり、家庭で補う努力だけでは乗りきれなくなった。そこで4月から支援学級に転籍。「iPad」を学校に持ち込んで、学習の補助道具として利用するようになった。

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