その高橋もかつては、AIによる社会変革を脅威だと考えていた。これまでの発明とは違い、人間をまるごと代替し得る技術になるからだ。人間が地球で最も知的な種族ではなくなる。そんな技術開発はやめるべきだ。この考え方は「地球派」と呼ばれる。

 しかし、地球派に位置し続けるのは困難だった。AI開発を未来永劫禁止することは非現実的だし、「気候変動や経済危機などのリスク回避にも役立つAIの発展を止めてしまうことは、人類が存続するのをかえって難しくする」と思えたからだ。

 地球派に対抗する考え方が「宇宙派」。発展が止められないなら、人類社会に融和的なAI技術を開発するしかない。テクノロジーの恩恵を受け、最終的には人類とAIが融合し、宇宙に広がっていけば有益だろう。そんな思いから名づけられた。高橋も悩んだ末に、宇宙派に転向したという。(文中敬称略)(アエラ編集部)

AERA  2016年5月16日号より抜粋